【相続問題】妻が夫の遺産のすべてを相続する方法について
- 行政書士 服部祥明

- 6月30日
- 読了時間: 4分

「夫婦なんだから、夫が亡くなれば妻が全部相続できる」と思い込んでいる人は案外少なくありません。
配偶者はかならず相続人になりますが、子どもがいれば共同相続となります。さらに、子どもがいない夫婦の場合は、配偶者だけで相続が完結するとは限りません。子どものいない夫婦で、夫が亡くなった場合は、「配偶者(妻)」と「血族相続人(夫の両親、兄弟姉妹など)」が法定相続人となります。
相続割合の基本
以下、家族構成にしたがって、夫が亡くなった場合の法定相続分がどうなるかについて、考察していきましょう。
(1)子どもがいる家族の場合
妻が2分の1、子どもが2分の1の相続割合(法定相続分)になります。子どもが複数いる場合は、2分の1を等分に分割します。たとえば子どもが3人いる場合は、妻が2分の1、子ども1人につき6分の1ずつの法定相続分となります。
(2)子どもがいない家族の場合
①夫の親が健在の場合
妻が3分の2,夫の親が3分の1の法定相続分となります。両親健在の場合は、それぞれ6分の1ずつを相続します。
②すでに夫の両親が死亡し、夫に兄弟姉妹やその子(夫の甥姪)がいる場合
妻が4分の3,夫の兄弟姉妹や、兄弟姉妹が亡くなっている場合はその子(夫の甥姪)が4分の1の法定相続分になります。兄弟が複数いれば、その数によって等分に分割します。
③夫の両親が死亡し、兄弟姉妹(および甥姪)がいない場合
妻がすべての遺産を相続します。
遺留分のあるなしが重要
法定相続人には、法定相続分の相続権がありますが、これはあくまでも基本であって、かならずしも法定相続割合に従って財産を分割しなければならないというわけではありません。このときに重要となる考え方が、「遺留分」です。
遺留分とは、「最低限もらえる遺産の取り分」のことで、遺言や生前贈与によって、自分の法定相続分が減らされたとしても、「最低限もらえる分」の金銭を請求できる制度です。
遺留分権利者に該当するのは、兄弟姉妹(甥姪)以外の法定相続人です。具体的には配偶者、親、子ども、孫に、遺留分が認められています。ちなみに親の場合、請求できる遺留分は法定相続分の半分(6分の1)です。
視点を変えると、遺言や生前贈与によって、ある人にすべての遺産を相続(贈与)させる内容の遺言書や生前贈与がなされた場合、「遺留分のない兄弟姉妹に対しては有効」ということになります。
妻にすべての遺産を相続させるための公正証書遺言
(1)夫の両親には遺留分があるので注意
遺留分の存在を勘案すると、夫の親が健在であれば、妻がすべての財産を相続することは難しいでしょう。夫婦間の子どもの相続権についても同様です。
妻がすべての遺産を相続する方法のひとつは、両親が夫の相続放棄の手続きをすることです。あるいは、法定相続人全員による遺産協議によって、妻がすべての遺産を相続する合意が成立すれば、当然ながらその内容の協議は成立します。
(2)兄弟姉妹間の遺産トラブルへの対策
多くの相続問題の悩みは、子どものいない夫婦が、夫の兄弟姉妹に相続させたくないという事情があるケースでしょう(すでに夫の両親がなくなっているケースを想定)。遺産分割協議での合意が難しい場合の対策として有効なのが、妻への生前贈与や遺言書、とくに公正証書遺言の活用です。
①妻への生前贈与
夫が生前、財産を妻に贈与した場合、当該の財産は遺産から除外されます。贈与税には基礎控除があり、贈与額が年間110万円以内であれば、税金はかかりません。ただし、3年以内の贈与については、相続財産に持ち戻して加算されるので注意が必要です。
自宅の贈与については、特別に贈与税の控除規定が設定されています。婚姻期間が20年以上の夫婦であれば、配偶者控除の対象となり、基礎控除の110万円のほかに、最高2000万円まで配偶者控除を受けることができます。
②遺言書の作成
「財産をすべて配偶者に相続させる」という内容の遺言を残しておくことで、遺産分割協議を行うことなく、すべての財産を配偶者に相続させることが可能です。
自筆証明遺言の場合は、被相続人が自分で書いたものであるか、日付が書かれているかなど、遺言書の要件をすべて満たしていないと無効になるリスクがあるので、細心の注意が必要です。
間違いのない方法として、公正証書によって遺言を作成することを最優先に検討してください。





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