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【相続問題】相続放棄する際に注意したいポイントとは

  • 執筆者の写真: 行政書士 服部祥明
    行政書士 服部祥明
  • 5月21日
  • 読了時間: 6分

相続が発生したとき、あえて相続せずに相続放棄するという選択肢もあります。

とくに、亡くなった人(被相続人)に、プラスの財産を超える借金があれば、多くの相続人は相続放棄を検討するはずです。

しかし、相続放棄が認められるためには条件があり、知らずにしてしまった行為が相続放棄却下の原因になってしまうことがあります。

 

  相続放棄と限定承認

(1)相続放棄の方法

相続放棄は、勝手に主張して認められるものではなく、「申述」という方法でおこないます。

申述書という書面を家庭裁判所に提出すると相続放棄の審査が開始し、いくつかのステップを経て、家庭裁判所からの相続放棄申述受理通知書を受け取れば、正式に相続放棄が完了します。

(2)限定承認とは

限定承認とは、相続によって得たプラスの財産の範囲内のみ、被相続人の負債の支払いを条件に相続を認める仕組みです。相続財産を超える借金は引き継がない一方、残った財産は受け取れることができます。

たとえば、被相続人の財産として預貯金1000万円、評価額2000万円の自宅がある一方で、借金が4000万円あるとします。相続人は自宅を手放したくありません。

相続人が限定承認すると、相続財産の預貯金1000万円に加えて、相続人の財産から2000万円を加えて返済に充てることで、自宅を手放すことなく、また、残りの借金1000万円を負担する必要がなくなります。

限定承認は相続人全員が合意し、共同で手続きを進めなければなりません。相続人全員による家庭裁判所への申述手続きおよび清算手続きが必要です。

 

  相続放棄する際にやってはいけないこと

(1)法定単純承認とされる行為

「単純承認」は、亡くなった人が残した全ての財産を相続することで、通常の相続においては、とくに手続きをする必要はありません。単純承認によって、相続人はプラスの財産もマイナスの財産もすべて引き継ぐことになります。

気をつけたいのは、相続放棄や限定承認を検討しているにもかかわらず、被相続人の財産の一部を処分してしまった場合は、単純承認を選択したとみなされてしまうということです。これを法定単純承認といい、これにより、相続放棄ができなくなってしまいます。

(2)申述書の不備に注意

申述書の不備や必要書類の不足は、相続放棄が却下される原因になります。

申述書には、放棄の理由や相続財産の概略を記載しなければならないため、財産状況をきちんと把握する必要があります。

不備や不足によって、家庭裁判所に受理してもらえないならまだしも、受理されたものの却下されてしまった場合は、再申請が困難になります。

 

  法定単純承認とされる具体的な行為

本人は被相続人の財産を処分したつもりなくおこなった行為が、「処分」にあたる場合があります。該当する主な処分行為を把握しておきましょう。

(1)遺産分割協議への参加

遺産分割協議は、相続することを前提におこなうものですが、実際に分割する前であっても、処分行為にあたるとするのが通例です。

遺産分割協議は相続人全員でおこなわなければ有効にならないので、一部の相続人と相談する程度であれば問題はありませんが、遺産分割協議において相続放棄の意思を示していても、相続放棄としては無効です。相続放棄する場合は、あくまでも家庭裁判所での手続きが必要です。

(2)被相続人の預貯金の引き出し

被相続人名義の預金を引き出すことは、相続財産の処分行為にあたります。相続の全体が決まるまでは手をつけないのが賢明です。

(3)不動産の売却や解体、増改築など

被相続人の持ち家を売却、解体、増改築してしまうと、相続放棄できなくなります。

被相続人が固定資産税を滞納していたケースで、よかれと思って滞納分を支払ってしまった場合は、法定単純承認にあたります。

ただし、処分ではなく、「保存」にあたるとされる行為をおこなっただけであれば問題ありません。現状維持のための修繕や、第三者が無断で使っている土地を返してもらえるよう要求することなどは問題ないでしょう。

(4)賃貸アパートやマンションの解約手続き

被相続人が所有していた賃貸アパートやマンションの賃貸借契約を相続人が解約すると、処分行為とみなされ、法定単純承認にあたるおそれがあります。

ただし、家賃の延滞によって貸主や管理会社側から解約されてしまった場合は、相続人の意思による処分行為とはいえないため、問題はありません。

(5)財産価値のある家財や自動車の売却

自家用自動車のほか、遺品に思わぬ財産価値が認められる場合もあるので、相続内容が確定するまでは、処分を避けたほうが無難です。

(6)借金や税金の支払い、還付金の受け取り

被相続人の借金や税金について、相続財産から支払えば処分行為とみなされてしまいます。どうしても支払いが必要なときは、相続財産からではなく、相続人が立て替えるようにしてください。

所得税などの還付金は、受取名義人が亡くなった後でも、被相続人の財産なので、還付金を受け取ることは法定単純承認に該当します。

 

  法定単純承認に該当しない具体的な行為

(1)相続財産や相続人調査

被相続人の財産を調査するだけであれば、法定単純承認にはあたりません。

むしろ、被相続人がどのような財産を持っているかを把握しなければ、相続放棄すべきかどうかを判断できないでしょう。

(2)健康保険や年金などの喪失手続き

被相続人が加入していた健康保険の喪失手続きは、法定単純承認になりません。

被相続人の扶養家族になっている方は、新たに国民健康保険に加入する必要があります。年金の喪失手続きについても同様です。

(3)財産価値が全くない遺品の形見分け

被相続人が愛用していた品物を、家族や友人と分けること(形見分け)は、高級品でなければ、基本的には財産価値がないと考えられます。

(4)死亡保険金や遺族年金などの受け取り

死亡保険金や遺族年金は、受け取っても問題ありません。死亡保険金は亡くなった人のものではなく、受取人の固有財産に分類されるからです。また、遺族年金は遺族の権利であるとされています。

ただし、死亡保険金の受取人が被相続人本人になっている場合は、相続対象の遺産になってしまうので要注意です。

 

  相続の開始を知ってから3か月間の熟慮期間

相続は、自分が相続人となったことを知った日から3か月以内に、単純承認、限定承認、相続放棄のいずれかを選択しなければなりません。この期間を熟慮期間といいます。

なにもせずに熟慮期間を過ぎると、単純承認に移行します。「相続放棄に期限があることを知らなかった」などの言い分は通用しないので注意してください。

 
 
 

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