【相続問題】遺産から葬儀費用を支出すると相続放棄できなくなる?
- 行政書士 服部祥明

- 2025年12月23日
- 読了時間: 4分

親族の葬儀を執り行う際に、葬儀費用の負担は、遺族にとって大きな課題です。
葬儀費用をどこから、誰が負担するのかについて、悩むケースが多いかもしれません。費用の支払い方が、相続放棄や相続税といった法律面にどう影響するかについても、気になるところです。
ときどき耳にするのは、「遺産の中から葬儀費用を出しても大丈夫だろうか?」という疑問です。
誰が葬儀費用を支払うのか
(1)誰が負担しても大丈夫
そもそも葬儀費用は誰が支払うべきものなのでしょうか?
法律上明確なルールはありませんが、一般的には、故人(被相続人)の配偶者や子どもが喪主となって葬儀を主宰し、葬儀費用を払うケースが多いでしょう。
(2)相続財産からの支払いも可能
葬儀費用は、被相続人の遺産(相続財産)から支払ってもかまいません。
ただし、葬儀費用が過大になると、相続財産が目減りし、相続人間のトラブルに発展する危険があるほか、不用意に自分の口座に大金を移してしまうと、自分以外の相続人から、横領や使途不明金の疑いをかけられるリスクがあるので、注意が必要です。
相続放棄との関係
たとえば、被相続人の遺産について、プラスの財産よりもマイナスの財産の方が多い場合は、相続放棄を選択することが可能です。
その際に問題となるのは、単純承認と相続放棄の関係です。単純承認すると、相続放棄ができなくなります。
(1)熟慮期間
相続人は、相続開始があったことを知った日から3か月の熟慮期間内に、「単純承認」「限定承認」「相続放棄」のどれを選択するかを決めなければなりません。熟慮期間を過ぎると、自動的に単純承認したとみなされます。
(2)単純承認すると相続放棄できない
相続人が熟慮期間内に相続放棄をしなかった場合のほか、相続放棄をする前に、相続財産の全部又は一部の処分をすると、単純承認したとみなされ、相続放棄ができなくなります。
葬儀費用を相続財産から支払っても相続放棄できる
(1)葬儀費用が一般的な範囲であれば大丈夫
それでは、遺産から葬儀代を払った場合、単純承認したことになり、その結果、相続放棄できなくなるかといえば、必ずしもそうなるとは限りません。
ただし、葬儀の規模によっては、相続放棄が認められなくなる可能性はあります。
常識的に、身分相応の範囲を越えるような豪華な葬儀を行った場合、適切な範囲を越えた部分については「相続財産を処分した」と判断され、単純承認とみなされる危険があります。
相続放棄を考えている場合は、葬儀費用の負担について、慎重に判断しましょう。
(2)こんな費用は認められない可能性がある
たとえば、葬儀に関連した以下の費用についても、葬儀で必須と認められない可能性があります。
●香典返し
●墓地の購入費用
●初七日や四十九日、一周忌などにかかった費用
これらの費用については一般的に「葬儀費用」には含まれないことから、単純承認とみなされる可能性が高いとされています。
(3)争族対策のために証拠を残しておく
相続財産から葬儀代を捻出した場合には、領収書や明細をすべて残しておきましょう。
万が一の相続人間の争議のリスクに備えて、手続きが多少面倒でも、「相続預金の払戻制度」や「家庭裁判所への申立て」を利用して、預金口座からお金を引き出すのがベストの方法です。
最小限の対策としては、領収書や費用明細とともに、お布施や心づけなど、領収書が発行されない支払いについても、支払日や支払先、支払った金額などのメモを残しましょう。
(4)喪主が相続放棄しても香典は受け取れる
喪主が相続放棄をしていても、香典を受け取ることについては問題ありません。
香典は、葬儀を執りおこなう喪主に対して渡される贈与の一種であるとされており、相続財産に含まれません。したがって、香典を葬儀費用に充てることも、一般的に認められています。
葬儀費用の支払いのあとに香典のお金が残った場合は、喪主が使い道を決めることができます。





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