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【相続問題】遺産相続によって生活保護の支給はストップしてしまうのか

  • 執筆者の写真: 行政書士 服部祥明
    行政書士 服部祥明
  • 2025年12月10日
  • 読了時間: 4分


「親が亡くなって遺産を相続することになったけれど、自分は生活保護を受けている」。

このような場合、「遺産を相続したら、生活保護を打ち切られてしまうのではないか」と心配になる人がいるかもしれません。

そこで今回は、生活保護と相続との関係や注意点について解説します。

 

  生活保護の受給資格

生活保護を受けるために必要な条件は、収入が国が定める保護基準(最低生活費)に満たないことです。

最低生活費とは、衣服代、食費、家賃、教育費など生活に必要な費用の合計金額で、住んでいる地域や世帯人数によって異なります。

生活保護は世帯単位でおこなわれ、世帯全員の努力によっても最低生活費に満たない場合に、受給することができます。なお、親族などの扶養義務者から援助を受けられる場合は、その援助が生活保護制度に優先します。

土地や家屋は、生活のために必要と認められれば、引き続き保有できますが、処分によって得られる金額が多い、住宅ローンが残っているなどの場合は、手放す必要があります。

自家用車の所有は、原則として認められません。しかし、通院や子どもの送迎に欠かせない、公共交通機関が少ない地域に住んでいるなどの事情があれば、継続して使用できる可能性があります。

 

  生活保護を受給していても遺産は相続できるが

遺産を相続できる権利は、生活保護受給者であるからといって失われるものではありません。そのため、生活保護を受給していても、遺産は相続できます。

ただし、遺産を相続することによって、生活保護の受給資格を満たさなくなると、状況は変わります。

(1)相続財産の額によって受給停止または廃止になる

生活保護は、あくまでも最低限度の生活の維持のために行われるものです。

そのため、遺産を相続したことで、最低限度の生活を維持することができるようになった場合には、支給停止または廃止、あるいは、受給額が減額される可能性もあります。

なお、遺産を使い切って再び生活に困窮したといった事情があれば、改めて生活保護を申請することは可能です。

(2)遺産相続がいくらまでなら生活保護を続けられるのか

実際に、どのくらいの金額を相続すると生活保護の停止や廃止になるといった明確な基準はありません。

一般的には、臨時的に収入の増加があった場合、6か月以内に再び保護を要する状態になることが予想される場合は生活保護を停止、6か月を超えて保護を要しない状態が継続すると認められる場合は生活保護を廃止するという運用がなされているようです。

具体的な状況によって判断が変わるので、担当のケースワーカーに相談してみて下さい。

 

  生活保護受給者が遺産を相続した際の注意点

(1)かならず福祉事務所等に届け出ること

生活保護の利用者は、世帯主ないし世帯員に何らかの収入が発生した場合には、速やかに保護の実施機関または福祉事務所長にその旨を届け出る必要があります。

遺産を相続した場合も同じなので、福祉事務所への届出を忘れずに行いましょう。

(2)届け出を怠ると、返還請求されるおそれもある

「ばれないだろう」と思って、福祉事務所などへの届け出を怠ることは絶対にやめてください。

福祉事務所は預貯金などの資産を調査する権限があります。調査によって遺産相続が判明することがあり得ます。あるいは、自分以外の相続人からの情報提供で判明することもあるでしょう。

遺産を相続したことを届け出ないで、生活保護の受給を続けると不正受給になり得ます。

罰則として、不正に受給した保護費相当額に最大40%を上乗せして、徴収されることになります。

 

  生活保護受給者は相続放棄できるか

「生活保護を打ち切られるくらいなら、遺産を相続放棄したい」と考える人もいるでしょう。

この場合、相続放棄は可能でしょうか。

(1)相続放棄は可能

生活保護受給者であっても、相続放棄をする自由は制約されません。

生活保護受給者であることを理由に、家庭裁判所が相続放棄を受理しないことはないでしょう。

(2)相続放棄が生活保護に影響を与える恐れはある

ただし、相続放棄が生活保護に与える影響は別問題です。

なぜなら、生活保護法が定める、「利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用」するという要件との関係で、相続した遺産は最低限度の生活の維持のために活用すべきとも考えられるからです。

そのため、遺産がプラスであるにもかかわらず相続放棄した場合は、福祉事務所の判断によっては、資産を生活維持のために活用しなかったとみなされ、生活保護の受給資格を失うかもしれません。

一方で、相続放棄は本人の意思が重視される「身分行為」なので、生活保護受給者であっても相続放棄をする自由を制約されるべきではなく、生活保護法上の問題は生じないという見解も成り立ちます。

法的な解釈が微妙であることもさることながら、現実的には、生活保護の受給額と相続財産の額との関係が重要です。

したがって、相続放棄を検討している場合は、独断で決めるのではなく、事前に担当ケースワーカーに相談するべきでしょう。

 
 
 

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