【相続問題】遺言執行者の役割
- 行政書士 服部祥明

- 2025年12月15日
- 読了時間: 4分

自分の没後の意思を明確に伝え、相続人同士の争いを避けるために、遺言書は非常に有効な手段です。しかし、遺言があれば安心というわけではなく、実際にその内容をどのように実現するかという課題が残ります。
今回は、相続や遺言に関連する「遺言執行者」の役割について解説します。これから遺言を作成しようと考えている方にとって、理解を深める一助となれば幸いです。
遺言執行者とは
遺言の内容をスムーズに実現するためには、遺言執行者の存在が不可欠です。遺言執行者は、遺言書作成の段階から指定しておくことが望ましいでしょう。
(1)誰が遺言執行者になるのか
遺言執行者は、遺言によって自由に指定することが可能です。
相続人の中から選ぶことも、親族以外の第三者を指定することもできます。専門的な知識や公平性を重視する場合には、行政書士、司法書士、弁護士などの専門家を遺言執行者に選ぶケースも増えています。
遺言執行者が遺言で指定されていない場合や、指定された遺言執行者が辞退した場合は、家庭裁判所に申し立てを行い、裁判所が遺言執行者を選任します。
(2)遺言執行者になれない人
なお、未成年者や成年被後見人など法律上行為能力が制限されている人は執行者になれません。また、相続人の中でも利害関係が強すぎて中立性を欠く人や、健康上の問題から継続的に職務を果たすことが困難な人も、適任とはいえないでしょう。
(3)遺言執行者が必要なケースと必要がないケース
遺言の内容によって、必ず遺言執行者が必要になる場合があります。
代表的なケースは、遺言による非嫡出子の認知と相続人の廃除(および廃除の取消し)です。
一方で、単純に財産の分配を指定するだけの遺言であれば、相続人同士が協力すれば、必ずしも遺言執行者がいなくても手続きを進められるでしょう。
ただし、遺言書が相続人同士の利害が対立を招く可能性がある内容であれば、遺言執行者を置いておいた方がスムーズに手続きが進むでしょう。
遺言執行者の役割
遺言執行者は、遺言の執行に必要な行為について包括的な権限を持ち、その範囲内では相続人の同意がなくても単独で手続きを進められます。相続人は遺言執行行為に干渉することはできません。
相続開始後に、相続人や相続財産の調査を行い、誰が相続人なのか、どの財産が対象になるのかを明確にします。その上で、不動産や預貯金、有価証券などの遺産の分配手続き(払い出しや名義変更)を進めます。借金や未払い金を不動産等の資産を売却した代価で支払うよう遺言で指示されていれば、負債の弁済も行います。
遺言執行者に関する問題点
(1)遺言執行者が指定されていない
遺言で遺言執行者が指定されていない場合は、相続人全員が共同で手続きを進めることが原則となります。
しかし、遺言の内容によっては相続人間で意見が一致せず、手続きが滞ることも少なくありません。
その場合は、必要に応じて相続人やその他の利害関係人が家庭裁判所に申し立てを行い、裁判所が遺言執行者を選任することが可能です。
(2)遺言執行者が死亡していた場合
遺言で指定された執行者がすでに死亡していた場合は、相続人やその他の利害関係人が家庭裁判所に申し立てを行い、別の遺言執行者を選任してもらう必要があります。
なお、遺言に複数の遺言執行者が指定されているときは、残っている執行者がそのまま職務を行うことができます。
このような不測の事態に備えて、遺言書の中で「遺言執行者を決定する人」を指名しておく方法もあります。家庭裁判所に申し立てを行わなくても、その「決定する人」が遺言執行者を指名することができます。
(3)遺言執行者は辞任できるか
単に「大変だから辞めたい」といった理由は認められない可能性が高いですが、健康上の理由や海外転勤など、やむを得ない事情がある場合は、家庭裁判所に申し立てをして、遺言執行者の辞任が認められる場合があります。
なお、遺言執行者が第三者に任務を代理してもらうこと(復任権)が認められているので、必要に応じて、行政書士や司法書士、弁護士などの専門家に手続きを代理してもらうことが可能です。
なお、遺言執行者が適切に職務を行わない場合や、相続人に不利益を及ぼす恐れがある場合は、利害関係人が家庭裁判所に申し立てを行い、裁判所に認められれば解任することが可能です。
(4)遺言執行者の報酬
遺言執行者は、遺言に報酬に関する定めがある場合は、報酬を受け取ることができます。定めがない場合でも、相続人全員と遺言執行者が合意して報酬額を決定することも可能です。
なお、相続人の中から執行者を選んだ場合は、無報酬で行うケースも多いです





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