【離婚問題】別居中の生活費を支えてくれる公的支援制度
- 行政書士 服部祥明

- 1月7日
- 読了時間: 5分

協議離婚を目指して交渉を行う場合や、調停や訴訟で離婚を目指す時点で、すでに別居を開始しているケースも多いでしょう。
別居中の生活費の請求については、話し合いで決めるのが一般的ですが、別居している配偶者から生活費が支給されないといった状況も充分考えられます。そのような状況においては、離婚成立前であっても利用できる、公的な支援制度を活用しましょう。
別居中の配偶者から婚姻費用が払われない
法律上、夫婦には互いに生活を支え合う義務(扶助義務)があります。そのため、別居中であっても、収入の多い配偶者は、収入の少ない配偶者に対して生活費(婚姻費用)を支払う義務があります。
しかし、「別居しているのになぜ生活費を払わなければならないんだ」「実家に戻ったなら、生活費は必要ないだろう」「借金が多くて払えない」などといわれて、相手から婚姻費用の支払いを拒否されてしまう場合も考えられます。
別居中でも受給可能な公的支援について
配偶者からの婚姻費用だけでは生活が苦しい場合や、相手が支払いに応じない場合のセーフティネットとして機能するのが、国や自治体による公的支援です。
多くの人が、「離婚しないと手当はもらえない」と誤解していますが、住民票の異動や監護の実態を適切に手続きし、証明することで、別居中であっても受けられる支援はいくつもあります。
(1)児童手当
児童手当は原則、父母のうち所得の高い方が受給資格者となりますが、父母が離婚又は離婚協議中で別居しており、生計を同じくしていない場合は、実際に子どもを監護養育している側に支給されます。
支給期間は、子どもが15歳に達する日以後最初の3月31日までです。
(2)児童扶養手当
児童扶養手当(母子手当)は原則として離婚成立後のひとり親家庭が対象ですが、離婚前であっても、一定の要件を満たす場合は受給が可能です。
支給対象は、18歳に達する日以後の3月31日までにある子、又は、20歳未満で一定の障害の状態にある子を監護養育する者です。
(3)自治体独自の支援策
多くの自治体では、以下のような支援が受けられます。詳しくは各自治体に問い合わせをしてください。
①ひとり親家庭等医療費助成制度
受給資格者としての認定が必要になりますが、医療機関や薬局等の窓口に、健康保険証とひとり親家庭等医療費受給資格証を提示することで、医療費の自己負担が軽減されます。
②子ども医療費助成制度
医療費の自己負担額の一部又は全部が助成されます。
医療費助成には所得制限が設けられている自治体もありますが、その判定は、実際に子どもを監護・養育している親の所得を基準とする運用が多く見られます。
③就学援助
家族全員の合計所得金額が基準額以下の場合、又は、児童扶養手当を受給している場合は、申請により、公立小中学校での学習に必要な学用品費や給食費、修学旅行費等の一部を受給することができます。
通常は世帯全員の所得で審査されますが、別居中であっても生計が別であることを証明できれば、同居親の収入のみで審査を受けられる場合があります。
④母子・父子・寡婦福祉資金貸付制度
母子家庭の母、父子家庭の父、寡婦(配偶者のいない女子で、かつて母子家庭の母であった者)などを対象に、就学支度金、医療介護資金、転宅資金、生活資金など様々な種類の貸付を受けることができます。
(4)生活保護
別居中であっても生活保護を受給できる場合があります。
生活保護は世帯単位で適用されるのが原則なので、戸籍上の夫がいると受給できないと思われがちです。しかし、実際に夫から経済的援助を受けておらず、自身の収入や資産だけで最低生活費を下回る場合は、単独世帯として生活保護が認められる可能性があります。
(5)緊急小口資金・総合支援資金
社会福祉協議会が窓口となる公的な貸付制度です。給付金ではなく貸付金ですが、無利子・保証人不要で借りられる場合があります。
別居に伴う引越し費用や求職活動で一時的に資金が不足している場合は、消費者金融などを利用する前に、まずこれらの制度について相談してみることをおすすめします。
①緊急小口資金
緊急小口資金は、急な出費などにより一時的に生活が立ち行かなくなった場合に、原則10万円以内(特例で20万円以内)を借りられる制度で、比較的審査が早い点が特徴です。
②総合支援資金
総合支援資金は、生活を立て直すまでの一定期間の生活費として、月額最大20万円程度を最長3か月分借りられる仕組みです。
(6)その他の生活支援策
①公営住宅への優先入居
20歳未満の子を扶養する母子世帯・父子世帯が公営住宅への住居を希望する場合に、入居抽選での優遇措置があります。
②国民健康保険料の減免制度
国民健康保険に加入している世帯に児童扶養手当を受給している者がいる場合は、国民健康保険料が減免されます。
別居中に公的支援を使うための事前準備
公的支援を円滑に受けるためには、行政上の手続きを正しく行うことが欠かせません。
重要なのは、住民票の異動と世帯の扱いです。
(1)住民票の異動
公的支援を確実に活用するためには、住民票や世帯の扱いについて早めに役所の窓口で相談し、自身の状況に合った手続きを取ることが大切です。
公的支援の多くは、住民票がどこにあるかを基準に判断されるため、別居先に住民票を移すことで、児童手当の受給者変更がスムーズになるほか、子どもの転校手続きや就学援助の申請が可能になります。
DV等の被害があり、住民票を移すことで加害者に居場所が知られるおそれがある場合は、DV等支援措置(住民基本台帳の閲覧制限)を自治体に申し出ましょう。
(2)世帯分離
実家に戻って親と同居しているケースでは、世帯分離の手続きが必要です。
親と同一世帯のまま住民票を置くと、各種手当や減免制度の審査において、親の収入も含めた世帯収入で判断されるため、児童扶養手当や保育料の減免が受けられなくなるリスクがあります。実際に生計が別であれば、同じ住所に住んでいても世帯分離の手続きを行い、親世帯とは別の世帯として扱ってもらうことが可能です。





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