【離婚問題】養育費の強制執行とその条件について
- 行政書士 服部祥明

- 4 日前
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養育費の強制執行は、養育費を支払うべき親(おもに夫)が、支払いを怠った場合に、養育費をもらう側(おもに妻)が裁判所に申し立てて、夫の財産を強制的に差し押さえる手続きです。
養育費は、離婚後の子どもの生活費や教育のための非常に重要な資金です。
何らかの事情で、夫からの養育費の支払いが滞ったり、故意に養育費を支払わない事態に陥った場合は、妻が裁判所に申し立てて、夫の財産を差し押さえる強制執行を検討することになります。
養育費の強制執行が認められる要件
養育費を差し押さえる方法には、先取特権と債務名義による方法の2つがあります。
(1)先取特権による差押え
先取特権とは、法律で定められた一定の債権について、ほかの債権者に優先して債務者の財産から弁済を受けることができる権利です。担保の合意や登記がなくても、当然に優先弁済権が認められます。
養育費の債権には、先取特権が認められています。養育費の取り決めにおいて、夫婦が署名し、金額と支払期日を特定した合意書があれば、判決書や公正証書などの債務名義がなくても、先取特権に基づいて差押えの申し立てをすることが可能です。差し押さえられる金額の上限は、子ども1人あたり月額8万円で、これを超える分については債務名義が必要です。
(2)債務名義による差押え
債務名義とは、「この債務者がどの債権者にいくら支払う義務があるか」について、裁判所や公証人などの公的機関が認めた文書です。
代表的なものは裁判の判決書です。そのほかには、仮執行宣言付の損害賠償命令や支払督促などがありますが、おもに離婚に係る債権債務関係で適用されるのは、公証人が作成した文書(公正証書)による「強制執行認諾」条項です。
なお、月額8万円を超える養育費を請求する場合や、金額を特定した合意書がない場合は、「執行文の付与された債務名義」の正本が必要です。
強制執行認諾文言付き公正証書
離婚に伴う養育費の取り決めについて、もっとも活用されているのが離婚給付公正証書です。
(1)離婚給付公正証書の文言
離婚時に「強制執行認諾認諾条項」を付した公正証書を作成しておけば、それが債務名義となり、金額の上限なく、また、訴訟を経ずに、すぐに強制執行を申し立てることができます。
(2)養育費の強制執行で差し押さえができる財産
養育費の強制執行で差し押さえができる代表的な財産は以下のとおりです。
①給与
給与やボーナスの手取り額の2分の1まで、差し押さえが可能です。なお、未払いの養育費だけでなく、将来支払われる予定の養育費についても継続的に差し押さえが可能とされています。
②預貯金や現金
いずれも差し押さえが可能で、差し押さえできる範囲に制限はありません。
③生命保険
生命保険は強制的に解約となり、解約返戻金相当額を差し押さえることができます。
④不動産(土地、建物)
不動産を競売にかけて、換価して精算することができます。ただし、対象となる不動産にローンが残っており、競売してローンと相殺するとマイナスになるケースについては、競売や強制執行はできません。
⑤自動車
自動車を売却して換価して精算することは可能ですが、ローン支払い中で所有権留保特約付きの自動車については、強制執行できません。
⑥骨董品や宝石類など
これらはすべて売却して換価することができます。
養育費の強制執行の流れ
(1)事前の調査
相手方の財産、勤務先や住所を調査します。
相手が給料を開示しないとか、隠匿している財産があると考えられる場合は、裁判所への申立てにより、財産開示手続きを選択することができます。弁護士に相談してみましょう。
(2)裁判所への強制執行の申し立てと差押命令
申立書のほか、住民票と戸籍謄本、債務名義正本の送達証明書、執行文などの資料を準備して、裁判所へ申し立てを行います。書類に不備がなければ、裁判所が差押命令を出します。
強制執行が有効に働かない場合がある
強制執行は、どんなケースでも成功するというわけではありません。たとえば、以下のようなケースでは、強制執行の不発や、養育費の減額を求められる可能性があります。
(1)相手が生活に困窮している場合
相手が自己破産や失職、病気などを理由に、収入が途絶えてしまえば、強制執行することはできません。
(2)妻が再婚した場合
妻が再婚すると、それに伴って養育費の軽減を求められるケースがあります。
妻が再婚し、子どもと新たな配偶者が養子縁組をした場合は、再婚相手に一次的な扶養義務が生じるので、養育費を支払うべき元夫は、養育費の支払いの軽減を求めてくる可能性があります。





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