ペットに財産を残すための「負担付死因贈与契約」
- 行政書士 服部祥明

- 10月22日
- 読了時間: 4分

ペットフードの質の向上や医療の発達により、飼い犬や飼い猫の平均寿命は延びています。自分がペットより先に亡くなることに不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
自分が亡くなった後は誰かが面倒をみてくれるだろうと思っていても、親族間で押し付け合いになったり、最悪の場合、殺処分されてしまう可能性もあります。
ペットに遺産相続させることはできない
ペットは民法上「物(ぶつ)」として扱われます。財産を残せるのは人、または法人に対してのみのため、ペットに直接財産を残すことを遺言書で指定することはできないのです。
ペットを世話してくれる人に財産を残す「負担付死因贈与契約」
ペットに直接財産を渡すことはできませんが、ペットの世話をしてくれる人に贈与(財産を譲り渡す)することは可能です。贈与したお金をペットのために使ってもらうことができれば、飼い主さんの希望は叶えられるはずです。これが「負担付死因贈与契約」という選択です。
負担付死因贈与契約の手続き
負担付死因贈与契約とは、受贈者(あたらしい飼い主)が負担を引き受けてくれることと引き換えに、指定した財産を、贈与者(元の飼い主)が死亡した時点で贈与する契約です。
(1)世話をしてくれる人を決める
残されたペットのことを考えると、最も重要なのは世話をしてくれる人の選定です。
財産だけ受け取って、ペットの飼育を放棄するようなことがあってはいけません。したがって、受贈者が信頼できる人で、無償でも世話を引き受けてくれるくらいの動物好きの人を選ぶのがベストです。
ペットの寿命も考えて、できれば高齢の方ではなく、最後までお世話をしてもらえる人を選びましょう。
(2)契約書を作成する
契約は贈与者と受贈者の2者間で結びます。契約書は公正証書遺言で作成しましょう。公正証書は信頼性が高く、紛失や改ざんの心配もありません。
死因贈与契約は、遺言書の役割もあります。ペットが自分より先に亡くなったときに備え、その場合は遺贈しないという予備的遺言を加えておくと良いでしょう。
負担付死因贈与契約の注意点
(1)適切な贈与額を決める
●飼育費用
ペットの生涯にかかる飼育費用は、犬の場合は200~300万円程度、猫の場合で100~150万円程度と言われています。もちろん、犬猫の種類や年齢によって大きな違いがでるでしょう。
餌代や医療費といった飼育費用が、遺贈された財産を超えた場合、受贈者はそれ以上、ペットのための費用を負担しなくてもよいと判断されてしまうので、ギリギリの費用設定は危険かもしれません。余裕をもった贈与額を設定しましょう。
●贈与者の報酬
ペットの世話には精神的な負担も生じるため、飼育の実費だけでなく、受贈者に一定の報酬を与えるというのが一般的な契約です。
(2)遺言執行者を指定する
ペットを引き取ってもらうのは贈与者が亡くなった後になるため、きちんと世話をしてくれているかどうかを、自分の目で確かめることはできません。財産だけもらってペットの世話を怠るようなことにならないよう、受贈者の世話を監視する役割をする「遺言執行者」を指定しておくことをおすすめします。
遺言執行者は、受贈者がその義務を履行しないときは、注意や勧告をし、それでも改善しない場合は、契約を解除することができます。
(3)負担付死因遺贈により他の相続人の遺留分を侵害しないようにする
法定相続人(兄弟姉妹は含まない)には、最低限遺産相続できる取り分(遺留分)があり、遺言によって遺留分が侵害された場合には、侵害額を請求する権利があります。
遺贈する財産が相続人の遺留分を侵害すると争いになるリスクがあるので、相続人の遺留分を侵害しない範囲で遺贈額を指定しましょう。
負担付死因贈与契約は専門家に
負担付死因贈与契約書は公正証書遺言で作成しましょう。
解説したように、負担付死因贈与契約書はペットのための契約であるとともに、ご自身の遺言書の意味もあります。公正証書を作成する際は、法律的な知識も必要になりますので、弁護士、行政書士、司法書士といった法律の専門家のアドバイスを受けてください。





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