凍結された故人の銀行口座からお金を出す方法
- 行政書士 服部祥明

- 10月30日
- 読了時間: 3分

相続の手続きにおいて発生するのが、銀行口座の解約、払戻しです。
亡くなった人の名義の口座に残された預貯金は、相続財産として相続人に引き継がれることになりますが、そのためには口座を解約して、払戻しを受ける必要があります
このとき、その口座が凍結されていると、面倒な手続きが発生します。
口座が凍結されるとは
銀行口座の凍結とは、その口座から一切の入出金ができなくなることです。「死亡届を提出すると口座が凍結される」「亡くなった瞬間に凍結される」といった、ネットなどの誤った情報を信じている方がときどきいますが、そうではありません。
「金融機関が名義人の死亡を知ったときに口座が凍結される」というのが正しい答えです。
たとえば、誰もが知っている有名人が亡くなって、ニュースになったようなケースは例外として、遺族が、口座名義人が亡くなったことを金融機関に伝えた時点で口座が凍結されるというのが実際のところです。
口座の凍結を解除する方法
口座の凍結を解除するためには、遺産分割協議書のほか、被相続人と相続人の関係性を示す書類など、以下の書類提出が必要となります。
・口座名義人の出生から死亡までの戸籍謄本
・死亡が確認できる書類(住民票の除票,死亡診断書など)
・口座名義人の通帳、キャッシュカード
・相続人全員の現在の戸籍謄本
・相続人全員の印鑑証明書
ポイントは、「相続人全員」の印鑑証明書が必要になるということです。行き来が疎通になり、転居先のわからない相続人が一人でもいれば、手続きが大変です。
凍結口座の仮払い制度
通常の流れで口座の凍結を解く方法のほか、「仮払い制度」を活用する方法もあります。
一家の大黒柱が突然亡くなって故人の口座が凍結された場合、葬儀費用が捻出できないとか、遺族が当座の生活を続けられなくなるといった事情も考えられます。
そのような場合に活用したいのが、凍結口座の仮払い制度です。
相続手続きをおこなってから預金の払戻しを受けるのが、本来の口座解約のやり方ですが、相続人全員の同意や遺産分割協議書がなくても、一定の限度額(金融機関によって判断が違いますが、おおむね100万円までとされていrます)以内であれば、相続人お一人でも預貯金を引き出せるようになりました。
仮払い制度の注意点
預貯金の仮払い制度は、大変便利な制度ですが、利点だけでなく欠点もあります。
他の相続人と相談せずに、特定の相続人一人で手続ができてしまうため、後々トラブルが生じる危険があるほか、後日、被相続人に多額の借金があったことが判明した場合に、相続放棄ができなくなるというケースも考えられます。
遺言書があれば相続人の負担を減らせる
遺産を分割する方法には、遺言と遺産分割協議書の2通りがあります。
遺産分割協議書を実効あるものにするためには、相続人全員の協議が必要です。1人でも反対する相続人がいれば、協議は成立しません。また、所在不明の相続人がいる場合も同じです。
しかし、口座名義人の遺言書があれば、手続きの書類はかなり簡略化できるうえ、もし、遺言書に遺言執行者が指定されていれば、その人が相続人全員の代表として銀行の手続きを進めていくことになるので、口座凍結後の解約は大変スムーズです。
相続人の負担を減らすためにも、遺言書の作成をおすすめします。また、遺言書を作成する際は、公正証書を選んでいただくと、さらに利便性は増しますので、ぜひご検討ください。





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