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家族信託で注意したい住宅ローンの存在

  • 執筆者の写真: 行政書士 服部祥明
    行政書士 服部祥明
  • 10月7日
  • 読了時間: 4分

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家族信託は、財産の所有者である親が、老後の生活や財産管理を信頼できる家族に任せる(信託する)仕組みです。

家族信託は相続対策にも有効です。将来的な財産の承継先を指定できる「後継ぎ遺贈型信託(受益者連続型信託)」を活用すれば、亡くなった後の財産分配にも意思を反映しやすくなります。

原則として、家族信託の対象にできるのは「処分可能な財産」に限られます。不動産や預貯金、有価証券などは対象になりますが、契約者本人名義ではない財産や、すでに担保がついている資産は信託が難しい場合があります。

家族信託には適切な設計と運用が求められ、ルールの理解不足はトラブルの原因にもなります。そこで今回は、信託財産に住宅ローンがある不動産が含まれる場合の注意点について解説します。

 

  住宅ローンの残っている自宅不動産を信託財産にできるの?

所有している不動産に住宅ローンがある場合、その担保として、金融機関の抵当権が付いています。返済が完了するまで金融機関の抵当権は外すことができません。

金融機関との間には、ローン契約の際に締結した「取引約定書」という契約書があります。ローン付き不動産の名義を金融機関の承諾なく、信託名義に変更すると契約違反になり、金融機関からローンの一括返済を求められる危険があります。

このように、ローン付き信託不動産には制約がありますが、結論からいえば、住宅ローンが残っていても信託財産にすることは可能です。その際には、金融機関の了解を得ることにより、自宅不動産の名義人を受託者に変更する必要があります。

 

  ローンの残っている自宅不動産を信託する際の2つのパターン

ローン付きの不動産を信託財産にする際には、不動産の名義変更のみで認められるケースや、不動産の名義を変更するならば、同時に借入れの債務者も引受人に変更しなければならないケースがあり、対応は金融機関によって異なります。

早速、具体的に代表的な2つのパターンを解説していきます。

 

●不動産の名義を変更する

●不動産の名義変更と債務者を変更する


委託者である父が、長男を受託者に指名して家族信託を結ぶ事例で考えてみましょう。

 

(1)不動産の名義を変更する

信託財産は、銀行から借入れをして建築した自宅で、銀行の抵当権が付いています。この場合、債務者はこれまで通り父のままで変更せず、自宅の名義のみ長男に変更する了解をもらうことができれば、自宅を信託財産にすることは可能です。

債務者と物件所有者が別になるため、銀行は、受託者(長男)に対して、放棄書(抵当権消滅請求権の放棄書)という書類の提出を求める場合もあります。

受託者は自宅の所有者となり、物上保証人(担保の提供者)になります。物上保証人は連帯保証人とは異なり、担保不動産の範囲で父の債務を引き受ける保証人のことです。

(2)不動産の名義変更と債務者を変更する

銀行から、不動産の名義変更をするなら、借入の債務者も父から長男に変更してもらわないといけないとされる場合があります。

この場合、借入の債務者を父から長男に変更し、受託者である長男の借入れとして、長男がローンを返済していくことになります。

 

  住宅ローンの残っている自宅不動産を信託財産にする際の注意点

(1)信託契約書に条件が明記されているか
ローンの債務者が委託者か、それとも受託者かのいずれであるかが、信託契約書に明記されていなければなりません。
(2)金融機関の審査規定

借主を変更するためには、受託者の信用情報が金融機関の内部審査の規定に通らなければなりません。借主変更の審査については、手続きに費用がかかったり、審査に時間がかかる場合もあります。

(3)ローン返済の注意点

債務者を受託者に変更する場合、信託財産でローンを返済してく内容の信託契約も可能ですが、返済金が信託財産で足りなくなれば最終的に受託者の財産から返済しなければなりません。

 

  住宅ローンの残っている自宅不動産でも信託財産にできる

ローンが残っている不動産であっても、信託財産にできますが、借入れ先の金融機関により対応が異なります。

借主変更の審査によっては、父と長男双方が債務を負担する「併存的債務引受」が必要だと判断される場合や、委託者を保証人とする条件を出されたり、受益権に質権を設定する必要を指摘されるなど、金融機関によって対応は様々です。

いずれにしても、事前に金融機関との調整がされないまま、家族信託の契約書作成を先行してしまうと、思わぬトラブルが予見されますので、充分注意してください。

家族信託契約を検討する場合には、かならず専門家に相談しましょう。

 
 
 

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