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【離婚問題】意外と知らない離婚の際の年金分割の仕組みについて

  • 執筆者の写真: 行政書士 服部祥明
    行政書士 服部祥明
  • 2025年9月26日
  • 読了時間: 6分

更新日:2025年11月21日




離婚相談者の方から、年金分割がよくわからないという声を聞きます。年金分割という言葉自体はご存じでも、その具体的な内容について理解されている方は少なくありません。たとえば、将来受け取ることのできる年金額が元夫婦間で単純に折半されることになると誤解されているケースもあります。

そこで今回は、年金分割の制度や手続の方法について解説したいと思います。

 

  年金の種類と年金分割の対象

日本の年金制度は、国民年金、厚生年金、私的年金の3種類がありますが、このうち年金分割の対象となるのは厚生年金だけです。つまり、年金分割できるのは、配偶者が厚生年金に加入している公務員やサラリーマンに限られ、自営業の場合は対象外です。

さらに、厚生年金は国民年金部分と厚生年金部分の2階建てになっていて、年金分割は「厚生年金部分」のみが対象になります。

 

  年金分割とはなにかをさらに詳しく

年金分割とは、夫婦が納めた厚生年金の「年金保険料」を離婚時に分け合う制度です。年金分割には対象期間があり、結婚してから離婚するまで夫婦が加入してきた厚生年金の「保険料納付記録」(標準報酬総額)が分割の対象となっています。

夫婦に収入格差があるケース、具体的には専業主婦、もしくは共働きのケースでも離婚した相手よりも収入が低かった場合は、年金分割により将来自分が受け取る年金額が増加します。

 

  年金分割制度は2種類

年金分割制度には以下の2つの種類があり、この2つの制度のいずれかを選ぶことになります。また2つを併用することも可能です。

 

1.合意分割制度

合意分割とはその言葉通り、当事者の合意または裁判手続きにより、裁判所が按分を定めることにより分割される仕組みです。按分は2分の1が上限となります。

2.3号分割制度

3号分割とは、請求者が「3号被保険者」の場合に適用されます。「3号」とは、「会社員や公務員の配偶者の扶養に入っていた人」のことをいいます。3号分割は平成20年4月から適用されたあたらしい制度です。

3号分割では、分割割合は2分の1と決められています。

3.合意分割制度と3号分割制度の併用

3号分割制度が適用される前に婚姻した夫婦の場合は、合意分割と3号分割を併用するのが一般的です。つまり、婚姻が平成20年3月以前の場合、平成20年3月までは合意分割、4月以降は3号分割を選択するのです。

 

  合意分割と3号分割はどちらを選んだらいいのか

合意分割と3号分割のどちらを利用すればいいのか、迷うこともあるでしょう。そこで、以下のパターンで解説します。

①専業主婦の場合

専業主婦として配偶者の扶養に入っていた場合は、基本的には3号分割を選択しますが、専業主婦の期間や婚姻時期によって、また収入があった時期がある場合は、合意分割を併用する必要があります。

 

1.平成20年4月以前に婚姻した⇒婚姻から平成20年4月まで合意分割、以後は3号分割

2.平成20年4月以後に婚姻した⇒3号分割

3.婚姻後、再就職して厚生年金に加入した期間がある⇒再就職期間のみ合意分割

 

②共働きの場合

1.夫婦ともフルタイム勤務の場合

夫婦双方が婚姻中フルタイムで働いていた場合は、合意分割になります。

合意分割では、厚生年金保険料の納付実績が少ない方が収入の多い方から年金分割分を受け取ります。そのため、収入の多かった妻が夫に年金分割する場合も考えられます。

2.パート勤務の場合

パート勤務でも、配偶者の扶養に入っている場合は3号分割を利用できます。ただし、パートでも扶養から外れている期間があれば、その間は3号分割の対象外となります。

 

  年金分割の手続き

年金分割は、離婚したら自動的に行われるわけではありません。ご自身で年金分割の手続きを行う必要があります。

合意分割も3号分割も、必ず手続きをしなければいけません。

分割請求の期限は、原則として、離婚届を提出した日の翌日から起算して2年以内で、その期間を過ぎると請求できないので注意が必要です(一部特例があります)。

分割手続きをする前に相手が亡くなったときは、その後1か月以内が請求期限です。

 

  年金分割の手続の流れ

年金分割は以下の流れで行います。

1.合意分割の場合

①情報通知書の取得

年金分割に必要な情報が記載された「年金分割のための情報通知書」を最寄りの年金事務所で取得します。

②分割割合の話し合い

夫婦間で分割割合について話し合います。合意できない場合は、家庭裁判所に調停や審判を申し立てて割合を定めてもらいます。

③請求手続き

離婚後、年金事務所に「標準報酬改定請求書」と、合意内容を証明する書類(公正証書、公正証書、裁判所の書類など)を提出します。この際、たとえば公正証書があれば一人で手続きが可能です。

④標準報酬改定通知書の受け取り

手続き後、約2~3週間で「標準報酬改定通知書」が届き、手続き完了の通知がされます。

2.3号分割の場合

①請求手続き

離婚後、年金事務所に「標準報酬改定請求書」を提出します。合意分割と異なり、相手の合意は不要です。

②標準報酬改定通知書の受け取り

手続き後、「標準報酬改定通知書」が届きます。

 

  離婚した妻は年金をいくらもらえるのか

一般論ですが、厚生労働省の「令和元年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、離婚による年金分割によって増えた年金額は、月額5,000円~30,000円の範囲とされています。

年金分割の金額の計算方法

年金分割の金額を知るために必要な資料は、「情報通知書」に記載されている内容です。情報通知書は1人でも入手可能なので、相手方に知られずに情報を入手することができます。

なお、50歳以上の方であれば、年金事務所で年金見込み額を知らせてもらうこともできます。

 

計算方法

A:夫の対象期間(婚姻期間)標準報酬総額

B:妻の対象期間(婚姻期間)標準報酬総額

※(A+B)×0.55×0.5(按分が2分の1の場合)

 

一例として、以下のパターンを参考にしてみてください。

 

夫(会社員) 年収 500万円

妻(パート従業員) 年収150万円

婚姻期間 20年

離婚後の妻の年金額 月96,000円

 

夫(会社員) 年収 600万円

妻(専業主婦) 

婚姻期間 20年

離婚後の妻の年金額 月86,000円

 

  年金分割の際の注意点

離婚してしまった後では、話し合いの機会をもつことが難しくなるので、年金分割については、親権や養育費、財産分与など他の離婚条件に関する話し合いの流れで、離婚する前に協議をして決めましょう。その際には、すべての条件を盛り込んだ離婚給付公正証書を作成することをおすすめします。

なお、協議による合意が成立しない場合には、調停や審判によって年金分割を行うこともできますが、そのためには時間と費用がかかります。

 


 
 
 

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