【相続問題】生命保険は遺産相続の対象になるか
- 行政書士 服部祥明

- 2025年11月12日
- 読了時間: 4分
更新日:2025年11月21日

被相続人が亡くなった後、支払われる生命保険金(死亡保険金)は、受取人として指定された人が受け取ります。
相続人が複数いる場合、受取人に指定されていない相続人の立場からすると、実質的には遺産である、と主張したい気持ちもわかります。しかし、契約上、生命保険は、「保険会社との契約およびこれを補完する保険約款に基づき、受取人に渡される」と決まっています。
したがって、原則的に生命保険金は受取人の固有の財産とされています。
生命保険は受取人の固有財産になる
生命保険金が受取人の固有の財産であるとすれば、基本的に生命保険金は遺産分割の対象にはならないことになります。
それでは、結果的に相続人間で受け取る財産に差がついた場合でも、例外措置などは存在しないのでしょうか。
受取人が変更になる場合
以下のようなケースで、生命保険金の受取人が変更になることがあります。
(1)指定された受取人が死亡している
受取人に指定された方が、被相続人よりも前に死亡している場合、保険金は受取人の相続人全員で分割することになります。
(2)生命保険金の受取人が指定されていない
生命保険金の受取人が指定されておらず、なおかつ保険約款に「生命保険金の受取人が指定されていない時は民法上の法定相続分の割合による」と記載されている場合、保険金は法定相続分の割合で、相続人に分割されます。
特別受益の問題
(1)特別受益者とは
特別受益者とは、被相続人から遺贈、生前贈与など、特別な利益を受けた相続人のことで、相続人間の公平を図るために、最終的に受け取る財産を分割する、特別受益という仕組みが用意されています。
この場合、他の相続人との公平を期すため、相続時の被相続人の財産に特別受益額を加えた「みなし相続財産」をベースに、各相続人の相続額が算定されます。
(2)生命保険金は特別受益に該当するか
生命保険金が特別受益にあたるか否かについて、判例では、「相続人の一人が取得した生命保険金は原則として特別受益にあたらないが、共同相続人間において著しい不公平が生じる場合には、事案に応じて民法903条の類推適用により持ち戻しを認める(つまり、特別受益と同様に扱う)」と判示しています。
つまり、相続において著しく不公平が生じる場合には、保険金の受取りは特別受益になる可能性があるということになります。
相続放棄をした場合に死亡保険金を受け取れるのか
保険金は受取人の固有の財産なので、基本的には、相続放棄をしても死亡保険金を受け取ることができるとされます。ただし、状況によって、受け取れる場合と受け取れない場合があります。
(1)被相続人の立場で生命保険金の中身が変わる
生命保険には、「契約者(保険支払者)」「被保険者」「受取人」の三者が関わっています。被相続人がどの立場であるかで、状況が異なってきます。
「亡くなった人=被保険者」であれば、生命保険金が下りますし、「亡くなった人=契約者」だと解約返戻金の請求権を含め、生命保険契約の権利が相続の対象になるのです。
(2)受け取れる生命保険金
相続放棄をしても受け取れる生命保険金は次のようなものです。
・「受取人=相続放棄をした人」と指定されているもの
・受取人指定はないが、「法定相続人=受取人」と約款等に定められているもの
このような生命保険金は、生命保険契約に基づいて支払われるため、最初から受取人固有の財産となります。
(3)受け取れない生命保険金
一方、以下のケースでは、相続放棄をしてしまうと、生命保険金を受け取ることができません。
・医療保険の入院給付金などで受取人が亡くなった人自身になっているもの
・亡くなった人が契約者のみに該当する生命保険の解約返戻金
このような生命保険金は、本来の相続財産として扱われるため、相続放棄をしてしまうと保険金を受け取ることができないのです。
生命保険金を相続財産として扱う
被相続人が生命保険を相続財産として活用する方法があります。
(1)遺産分割の代償金として利用する
代償分割とは、不動産等の分割できない資産を相続する場合に、その不公平を埋めるために現金を払うことを言います。
たとえば、相続財産に先祖代々の不動産しかなく、その土地建物を分割したくない場合を考えてみましょう。相続人AとBがいる場合、Aが保険金の受取人となって、同時に不動産を相続し、保険金をBに現金で渡すのです。これによって、不公平感を抑えて遺産分割をすることができます。
(2)相続税の納付金として使う
相続税は現金で納付しますが、相続人の固有財産や相続財産に現金があるとは限りません。
生命保険金は現金で受取ることが可能なので、相続税の納付金として使うことができるでしょう。





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