自筆証書遺言の限界と注意点
- 行政書士 服部祥明

- 10月21日
- 読了時間: 3分
更新日:5 日前

自筆証書遺言とは、遺言者が自筆して作成する遺言書のことです。費用もかからず、手軽に取り組むことができますが、形式に則って書くことで法的効力を持たせることが重要なポイントになります。
自筆証書遺言が無効になるケース
(1)全て自筆でないものは無効
遺言書の本文は全て遺言者の自筆でなければなりません。
遺言書の本文をパソコン、ワープロで作成してあるものは無効です。サインだけが自筆であるものも、やはり無効です。
従来は財産目録もすべて自筆で書く必要がありましたが、法改正によって、財産目録については手書きでなくても認められるようになりました。
財産目録をパソコンで作成したり、預金通帳をコピーして別紙とすることも可能となり、さらに作りやすくなりました。
(2)日付について
日付のない自筆証書遺言は無効です。西暦か和暦かはどちらでも大丈夫ですが、「令和●年吉日」といったった、日付が特定できない内容は有効として認められません。
(3)修正液で記入間違いを直したものは無効
修正テープで消した上に文字を書いたものは無効です。
文面を訂正する場合は、間違えた部分に二重線を引き、その部分に押印し、「〇〇について何字削除(または追加・加入)」など、訂正箇所を示して、変更した旨を付記します。
(4)連名の遺言書は無効
たとえば夫婦連名など、複数人が同一の証書で遺言を作成してはいけません。
紛らわしい遺言書は避けるべき
(1)日付について
たとえば「9月末日」と記載した場合、「9月30日」と判断できるため、有効とされるようですが、無用な混乱をおこさないよう、確実に「9月30日」と記載すべきでしょう。
(2)曖昧な表現
たとえば「妻にすべて任せます」と記載されていた場合、これを見た妻は「自分に財産を全て相続させる」と判断するし、その他の相続人は「妻が中心になって遺産分割をおこなう」と思うかもしれません。
このように、受け取る相手によって解釈が変わってしまう記載は、トラブルになる可能性があります。
自筆証書遺言書を作成する際の注意点
(1)遺留分の配慮がない遺言書は避ける
相続人が複数いるときには、各自の遺留分を考慮した内容の遺言書にすることが重要です。一部の相続人が遺言書の内容に納得できない際には、遺留分侵害額請求をされる可能性があります。
相続人間で争いが起こったり、後味の悪いことにならないように、法定相続人の遺留分を考慮した内容にしましょう。
(2)検認について
法務局で保管された以外の自筆証書遺言を有効なものにするためには、家庭裁判所で記録化する手続きをする必要があります。この手続きを「検認」と言います。
検認を受けた遺言書は、その内容の正しさが認められたということではありません。検認は遺言書が有効か無効かを判断する手続きではなく、単に「遺言書の状態や内容を保存する」だけの手続きなのです。要するに、遺言書が作成されたあとに改ざんがされなかったことの証明の意味があります。
したがって、ここで紹介したような内容の瑕疵があれば、遺言書が無効になることもあり得ます。
(3)法務局による自筆証書遺言の保管制度
自筆証書遺言を法務局に預ける制度がスタートしました。1通3,900円で法務局が保管してくれ、検認も不要となります。ただし、検認不要であっても、遺言書の内容の有効性そのものを認められたという意味ではないので、注意してください。
プロとしては公正証書遺言をおすすめします
自筆証書遺言は費用もかからず、手軽に取り組めるという利点がありますが、法律のプロとしてはあまりおすすめしません。
自筆証書は無効になるリスクが避けられず、紛失などの不測の事態が発生することも考えられますので、できれば公正証書遺言を選択していただきたいというのが、法律のプロの見解です。





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