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認知症に備えて知っておきたい成年後見人という選択肢

  • 執筆者の写真: 行政書士 服部祥明
    行政書士 服部祥明
  • 10月21日
  • 読了時間: 5分
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高齢化が進み、いまや認知症は社会問題になっています。高齢者を狙ったオレオレ詐欺などの犯罪行為が増えてきているほか、必要のない高額商品を購入してしまうなど、判断能力の低下によって、自身で財産の管理をすることが難しい高齢者は少なくありません。また、このような問題は、いつ自分や家族の身に降りかかってくるかわかりません。

このような場合に、ご本人の財産を保護するための制度が成年後見制度です。

そこで今回は、成年後見人の選び方やその職務内容、成年後見人に関するよくある疑問点など、いざという時に知っておくべき点について解説します。

 

  成年後見人の仕組み

成年後見人は、認知症や知的障害等の精神上の疾患により、判断能力が著しく低下した方の財産を保護するために、申請により家庭裁判所から選任されます。

ご本人(被後見人といいます)の財産は、日用品の購入等を除いて、家庭裁判所の監督のもと、成年後見人が管理します。被後見人は自由に財産を処分できなくなり、親族も成年後見人の同意なく勝手に財産を処分したり、使用することができなくなります。

 

  成年後見人を選ぶべきポイント

一人暮らしをしている年老いた独居の親が、判断能力を失い、必要のない家のリフォーム工事を度々契約してしまったり、銀行や役所の手続きができなくなってしまうなど、財産や権利が守られない状況になってしまった場合は、成年後見人を選ぶ必要があるといえます。

 

  誰が成年後見人になるのか

(1)一般的には親族がなる場合が多い

成年後見人に選ばれるのは、もともと被後見人の身の回りのお世話をしていた親族であることが一般的です。ただし、親族であっても未成年とか、破産者や家庭裁判所で親権喪失の審判を受けた、家庭裁判所で解任された保佐人や補助人の場合などは、後見人になることはできません。

(2)第三者が後見人になる場合

被後見人に多額の財産や一定の継続的収入がある場合や、親族間に利害の衝突や対立がある場合には、第三者(親族以外)の成年後見人が選ばれるケースが多いです。

たとえば、弁護士や行政書士、司法書士などの法律の専門家や社会福祉士などですが、社会福祉協議会などの公的団体や、NPO法人、企業のケースもあります。成年後見人は1人とは限らず、複数人が指名される場合もあります。

 

  成年後見人の申立手順

成年後見人を選任するためには、本人もしくは親族などが、本人の住所地を管轄する家庭裁判所に「後見開始の審判」の申し立てをおこないます。

(1)医師の診断書

被後見人として認定されるためには、本人の判断能力が精神上の障害により著しく低下していることが条件となっているため、医師の診断書が必要とされています。

(2)成年後見人の候補者を立てることができる

申立て時点において、適切な人物を候補者として裁判所に伝えるとよいでしょう。候補者がない場合は、家庭裁判所が選任します。

(3)選任の申立て後の流れ

後見開始の審判の申し立てをおこなうと、家庭裁判所による調査が行われます。

家庭裁判所調査官は、被後見人となる本人や後見人候補者と面談をして、生活状況、申し立てに至った経緯などを調査します。裁判所が必要と判断したときには、医師による鑑定が行われます(鑑定費用として5〜20万円程度が必要になります)。

裁判所が本人の判断能力が著しく低下していると判断すれば、成年後見人が選任されます。判断能力低下の程度に応じて、「被後見人」のほか、「被保佐人」「被補助人」の審判がなされます(その場合は、保佐人や補助人が選任されます)。

(4)成年後見人は登記事項となる

被後見人となり、成年後見人が選任されたことについては、戸籍謄本や住民票には記載されず、法務局において登記されます。

 

  成年後見人の仕事

(1)成年後見人の役割

成年後見人の職務は、被後見人の身上監護と財産管理です。

身上監護とは、身の回りのお世話をするという意味ではなく、介護契約や施設入所契約、医療契約等を本人に代わって行うほか、被後見人の生活のために必要な費用を本人の財産から計画的に支出する役割のことです。

後見人は被後見人の財産目録を作成し、収入や支出について、都度きちんと記録をして、領収書等の書類を保管します。

(2)家庭裁判所への報告

成年後見人は、年1回、家庭裁判所に、後見人としての職務について、報告の義務(後見等事務報告)があります。報告書には、被後見人の財産目録、預貯金通帳のコピー、収支表等を記載します。

(3)成年後見人の報酬

後見人には、被後見人の財産から報酬を得ることが認められています。報酬額は家庭裁判所が決定します。成年後見人の報酬は、本人の財産額や職務の内容によって異なりますが、通常、月額2〜5万円程度であることが多いようです。

なお、親族が後見人になるケースでは、報酬なしの受任も可能です。ただし、報酬を望まない場合も、家庭裁判所への報告は必要です。

 

  そのほか後見制度で知っておきたいこと

(1)法定後見人と任意後見人

成年後見人には2つの種類があります。

後見人が必要になった場合に、申し立てにより、家庭裁判所で選ばれる後見人を「法定後見人」といいます。

これに対して、将来もし自分が認知症等になって後見人が必要になったときに、後見人になって欲しい人との間で、あらかじめ契約を交わしていたケースで、その契約に基づいて実際に後見人になった人を「任意後見人」といます。

なお、いずれの後見人についても、成年後見人としての役割に違いはありません。

(2)成年後見監督人

成年後見監督人とは、その名のとおり、成年後見人を監督する立場の人です。

家庭裁判所がその後見人を監督する必要があると認めたケース、たとえば、親族が成年監督人に選任された場合や、任意後見人の場合は成年後見監督人が選任されます。

 

  成年後見制度については専門家に相談を

成年後見制度を申請するためには、裁判所への申立のほか、様々な準備が求められます。また、実際に後見業務が開始すると、家庭裁判所や成年後見監督人への報告が必要になります。

成年後見制度の活用を検討する際には、ぜひ法律の専門家に相談してください。

 
 
 

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