【離婚問題】離婚後も妻が自宅に住み続けるための課題(夫がローン債務者の場合)
- 行政書士 服部祥明

- 2025年11月6日
- 読了時間: 5分
更新日:2025年11月21日

離婚をする際には、財産分与によって夫婦の共有財産を分配することができます。銀行預金や有価証券のほか、夫婦が住む住宅も財産分与の対象になります。
その時に大きな問題になるのが、住宅ローンが残っているケースです。
ローン債務が残っている自宅の今後についてどうするかについては、状況によって対応が異なります。夫がローン債務者の場合もあれば、夫婦が共同で返済しているケースもあります。
今回は、夫がローン債務者、ローンの残債があるケースで、離婚後、妻がそのまま自宅に住み続けるための方法を考えていきます。
財産分与とは
財産分与とは、離婚する際に、夫婦が婚姻期間中に協力して築いた財産を、おもに妻側から分割することを請求できる制度です。離婚後の生活保障や、離婚の原因を作ったことに対する損害賠償の意味で行われる場合もあります。
財産分与には、銀行預金や株式、不動産など、さまざまなものが含まれます。共有名義でなく、どちらか一方の名義になっている財産でも、夫婦の協力によって形成されたのであれば、財産分与の対象となります。なお、「結婚前から所有している財産」や「親からの相続や贈与による財産」は、財産分与の対象に含まれません。
離婚したら自宅はどうなるか
婚姻中に購入した自宅は、夫名義であっても夫婦の共有財産とされ、財産分与の対象です。
財産分与の権利は原則半々ですが、預金や株券とは異なり、不動産を半分に分離することは困難です。離婚後は売却して現金化するか、いずれかが住み続けることになるでしょう。
たとえば、子どもの学校区を変えたくないなどの理由で、妻がそのままマイホームに住み続けることを希望するケースがあります。その際、夫がローン契約者であれば、「離婚後は返済をどうするのか」という問題が発生します。
離婚後もどうしても今の家に住み続けたい妻
離婚後も妻が現在の自宅(ローン残債あり)に住み続けるためには以下の3つの方法が考えられます。いずれが最適解かについては、妻の経済力などによって異なるでしょう。
(1)ローン名義、不動産名義ともに夫のままで、妻が住み続ける
ローン返済先の金融機関が認めてくれれば、離婚後も元夫が引き続き住宅ローンを払い続け、妻と子どもがその家に住み続けることが可能です。
しかし、この方法には大きな問題があります。
まず、金融機関がその状態を認めてくれるかどうかという問題です。基本的に、ローン名義と実際の居住者が一致することをローンの条件としている場合が多いのです。
もうひとつはローン滞納の問題です。
ローンが滞納になった場合は、家は競売にかけられ、妻が強制的に退去せざるを得なくなります。夫の悪意による場合だけでなく、夫婦間で夫が支払うという合意をしても、その後の状況の変化(失業や病気など)により、ローンが支払えなくなる可能性は否定できません。
(2)ローン名義、不動産名義を妻に変更し、妻が住み続ける
これは妻側に十分な収入があることが前提です。
妻が正社員であるなどの条件が必要だと思われます。専業主婦やパートの場合は、金融機関の審査が通らない可能性が高いでしょう。
金融機関の審査が通れば、住宅ローンの返済名義を妻の名義にし、自宅の所有権も妻に変更します。
(3)ローン名義、不動産名義ともに夫のままで、妻が家賃を払う形で住み続ける
夫と妻の間で賃貸借契約を結び、妻が夫に対して家賃を毎月支払う方法が考えられます。
妻が夫に渡したお金を夫が住宅ローン返済に充てることで、結果的に夫婦の家計から見れば住宅ローン返済額を折半しているような形になります。
ただし、金融機関では、(自宅居住者=ローン契約者)と規定していることが多く、この形が認められるのは例外的なケースかもしれません。
離婚後も妻が家に住み続けるための注意点
紹介したとおり、離婚後も妻がローン残債のある自宅に住み続ける方法はいくつかあります。
そこでここからは、離婚後に妻がこれまでの家に住み続ける際の注意点を解説します。
(1)可能であればローン名義を妻に変更する
ローン債務者の変更と同時に、自宅の所有者名義を妻に変更しておくことが望ましいです。
金融機関から債務者名義の変更が認められる前に、所有権を変更するのはご法度です。ローン返済中に、ローン名義人以外に所有権を移すことは契約上認められていないので、勝手に名義変更すると、一括返済を求められる場合があるのです。
現時点ではローン名義や所有者名義の変更が難しくとも、金融機関との協議のうえ、「ローン完済後に妻に名義変更する」旨を離婚協議書や公正証書に明記しておく対応で、将来的な名義変更が認められる場合もあります。
(2)ローン支払いの取り決めを公正証書に残す
離婚に際して金銭に関する取り決めをする場合は、公正証書の形で残すことを強くおすすめします。
公正証書とは、公証人という公務員が作成する公文書で、離婚時の夫婦間の合意内容を証拠として残すものです。単なる口約束や私文書だと「言った言わない」の争いになるリスクがありますが、強制執行認諾条項付きの公正証書を作成しておけば安心です。強制執行認諾条項とは、万一支払いが滞った際に、裁判をせずとも給与や財産の差し押さえができる効力を持たせる文言です。
離婚後も家に住み続けるためにはプロへの相談がおすすめです
離婚後も妻が家に住み続けるための方法や注意点について解説してきましたが、どの選択肢が最適かは各家庭の状況によって異なります。
離婚時に自宅の名義変更やローン借り換え、夫が支払いを続ける場合のリスク管理などの問題を適切に処理しないと、後になって大きなトラブルに発展する可能性があります。大切なのは、数ある方法の中から自分にとって最善の方法を見極め、確実に実行することです。
そのためには、行政書士や司法書士など、離婚の不動産問題に精通した専門家に早めに相談することが確実な道です。
第三者の専門家に客観的なアドバイスをもらうことで、一人で悩むよりも適切な解決策が見つかるはずです。手遅れになる前にぜひ専門家に相談し、安心して新生活をスタートできるように準備を進めましょう。





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