【相続問題】デジタル遺産を迷子にしないための遺言書作成術
- 行政書士 服部祥明

- 17 時間前
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通帳のないネット銀行やスマホの中のデータは、遺族には見えない隠れた遺産です。
相続が発生した際に、デジタル資産のパスワードがわからず、解約や名義変更ができずに困るケースが急増しています。そこで今回は、デジタル遺産を安全に家族へ託すための遺言書の活用について解説します。
デジタル資産のリスク
(1)本人以外に資産の存在がわからない
ネット銀行やオンライン証券は、支店を持たず、顧客とのやり取りは主にオンラインやメールで行われます。日常的に利用しているQRコード決済や電子マネーについても、紙の通帳がないため、故人がこれらの口座を持っていることを家族が知らないケースは非常に多いです。
(2)ログイン情報が不明
デジタル金融資産にアクセスするためには、ログインIDやパスワードが必須です。最近は二段階認証を設定しているサービスも多いです。
家族が口座やサービスの存在を知っても、パスワードがわからなければ手続きを行うことができません。金融機関やサービス提供会社は、セキュリティの観点から、契約者本人以外には基本的にログイン情報を教えてくれません。
(3)金融機関やサービス提供会社の手続きの負担
金融機関やオンライン証券会社と、所定の相続手続きをするためには、預金の残高証明の取得、戸籍謄本等の相続関係を証明する書類の提出、遺産分割協議書の作成など、煩雑な手続きを伴います。
(4)電子マネーやポイントの失効リスク
多くの電子マネーやポイントは、利用規約により、相続が認められていません。
一定期間を過ぎると自動的に失効してしまう規約のサービスもあります。少額であっても、誰にも引き継がれることなく消滅してしまうのは残念なことです。
(5)資産の変動
オンライン証券口座で株式や投資信託を保有していた場合、相続手続きに時間がかかっている間に、市場が変動し、資産価値が大きく減少してしまうリスクがあります。
(6)税務申告漏れリスク
ネット銀行の預金やオンライン証券口座の株式・投資信託は、相続税の課税対象となる相続財産です。
存在を把握していないと、相続税の申告漏れに繋がり、加算税や延滞税といったペナルティが課される危険があります。
デジタル資産の存在やパスワードの管理方法
(1)遺言書を活用する
デジタル遺産を行方不明にさせないためには、遺言書を活用するのが優良な方法です。
とくに、ネット銀行やオンライン証券口座といった、大きな資産の保管については、遺言書による明確な指定が、相続手続きの円滑化とトラブル防止に繋がります。
ただし、遺言書本体にパスワードを記載することは避けるべきです。セキュリティリスクが大きいからです。
(2)遺言書とエンディングノートの活用
遺言書にエンディングノートの存在と保管場所を記載する方法も有力です。
遺言書には、「私のネット銀行口座及びオンライン証券口座に関する詳細情報並びにパスワード管理方法は、別途作成したエンディングノートに記載し、自宅の書斎の引き出しに保管してあります。遺言執行者は、このデジタル資産に関する遺言の執行にあたっては、このエンディングノートを参照の上、遺言の執行に必要な一切の手続きを行ってください。」のように記載します。
エンディングノートにも「私の相続に関する法的な意思は、公正証書遺言(令和●年第何号)に記載してあり、甲公証役場に遺言書の原本が保管されています。」のように、双方に記載しておくと、家族が遺言書の存在を見落とすリスクを減らすことができます。
なお、ネット銀行口座やオンライン証券口座のパスワードは、エンディングノートに記載しておきます。
(3)オフラインでの保管
エンディングノートを活用するほか、以下の保管方法も考えられます。
①記憶メディア
パスワードなどを暗号化した上でUSBメモリなどの外部記憶媒体に保存し、ネットワークから切り離した場所で保管します。仮想通貨の秘密鍵なども、オフラインでの管理が推奨されています。
②信頼できる人に託す
遺言執行者や、心から信頼できる家族に、パスワード情報を含む機密情報を託します。託す相手と方法を明確にしておく必要があります。
③貸金庫の利用
パスワードなどを記録した媒体や、パスワードマネージャーのマスターパスワードを記録したものを貸金庫に保管します。ただし、貸金庫は契約者が死亡すると凍結するリスクがあるので注意してください。
その他の注意点
(1)利用規約の確認
利用しているネット銀行、オンライン証券、電子マネー、ポイントサービスなどの利用規約を確認し、死亡時の取り扱いに関する規定を把握しておきましょう。
(2)相続税の申告について
ネット銀行の預金やオンライン証券口座の株式、投資信託は、相続税の課税対象となる相続財産です。
金融資産は日々変動します。相続時に想定以上の資産価値になっている場合があり、現在の価値を知るためには、金融機関から残高証明書や取引残高報告書を取得する必要があります。相続税の計算や申告は複雑になる場合が多いため、税理士に相談することをお勧めします。





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