【相続問題】相続放棄の落とし穴
- 行政書士 服部祥明
- 27 分前
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相続財産には、不動産や現金、有価証券のようなプラスの財産だけではなく、マイナスの財産(借金や連帯保証など)もあります。
プラスの財産よりもマイナスの方が多い場合は、相続放棄を選択したほうがよいケースもあります。そこで今回は、相続放棄の基本と落とし穴についてわかりやすく解説します。
相続が発生したときの3つの選択
相続が発生した際には、相続人は、相続の開始を知ったときから3か月以内に、以下の3つから相続方法を選択しなければなりません。なお「相続の開始を知ったとき」というのは、通常は、人が亡くなった時点です。
(1)すべての権利と義務を引き継ぐ単純承認
後述する相続放棄や限定承認の手続きをしなければ、自動的に単純承認を選択したことになります。これにより、被相続人のすべての権利や義務を引き継ぎます。
(2)すべての財産を放棄する相続放棄
相続放棄とは、相続財産(資産や負債)の権利や義務の一切を放棄することです。
プラスの財産よりもマイナスの財産が多い場合、相続放棄を選択すれば、借金の返済から逃れることが可能です。ただし、相続放棄するためには、亡くなったことを知ったときから3か月以内に、相続放棄をすべきか否かを家庭裁判所に申述する必要があります。相続放棄が認められると、その相続人は初めから相続人でなかったとみなされます。
(3)財産の一部を引き継ぐ限定承認
亡くなった人の債務がどのくらいあるかわからない場合は、「限定承認」と呼ばれる方法が選択可能です。
限定承認によって、プラスの財産のみ相続し、そこから債務を差し引いた残額を引き継ぐことができるため、最悪プラスマイナスゼロになりますが、残額があれば引き継ぐことができます。
限定承認は、相続開始があったことを知ったときから3か月以内に家庭裁判所に申述して行います。ただし、家庭裁判所への申述は、相続人ひとりではなく、相続人全員で行わなければ認められません。
相続人全員が相続放棄をするとどうなるか
(1)財産は国庫に入る
相続放棄をすれば、相続人は債務の返済を問われません。
財産や債務があれば、相続放棄をしていない相続人に移行します。最終的に相続人全員が相続放棄すれば財産は国庫に帰属し、家庭裁判所が選任した相続財産管理人が、相続財産を処分、清算します。
(2)財産の管理義務は残る
相続人が相続放棄した場合も、相続財産管理人が選任されるまでは、自己の財産と同一の注意義務を負って相続財産を管理する必要があります。なお、管理以外の財産の処分は認められていません。
相続放棄の落とし穴
(1)相続財産の処分行為について
相続財産を処分したり、隠匿や消費したりする行為は、単純承認したものとしてみなされ、相続放棄ができなくなります。
具体的には、被相続人の預貯金の解約や不動産の譲渡、家財の処分などがあります。葬儀費用は相続財産ではないので、被相続人の口座から支払っても問題ありませんが、病院の入院費や介護費用、アパートの契約解除や滞納していた家賃を被相続人の預金口座から支払う行為については、相続財産の処分行為とみなされ、相続放棄ができなくなる可能性があります。
そのほか、たとえば、金銭的価値のない品物であっても、被相続人の思い出の品を持ち帰る行為は微妙です。被相続人に借金があった場合、あまり筋の良くない金融業者はこのように考えるかもしれません。
「親の物品を持ち帰った子どもは、遺産を限定承認したことになる」。
このような反論を避けるためには、物品の持ち帰りについても慎重であるべきでしょう。
(2)相続放棄は完全なものか
父親が先に亡くなったあと、母親が亡くなった際に借金が残されていたケースで、相続放棄が不発に終わる場合があります。
実は借金は父親のもので、相続が済んでいなかったのです。母の相続放棄をしても、父親の借金が相続されないままで残っていれば、相続人は父親の財産である借金の返済をしなければなりません。
(3)生命保険金は受け取れるか
死亡保険金の受取人に指定されていた場合は、相続放棄をしてもその分を受け取ることができます。生命保険金は、相続人固有の財産とみなされるため、相続財産とはなりません。
しかし、税法上は、生命保険金は「みなし相続財産」となるため、相続税が発生する可能性がある点は押さえておきましょう。

