【離婚問題】離婚した妻が夫の氏を選択する事情
- 行政書士 服部祥明

- 10月14日
- 読了時間: 4分
更新日:11月21日

今回は、離婚と姓の問題を解説します。
結婚して夫の姓(氏)を選択し、その後に離婚する場合、基本的には妻は旧姓に戻ります。しかし、場合によって夫の姓を名乗り続けることも可能です。そこには、大きな理由として、夫婦の間の子どもの存在があります。
結婚と氏との関係
(1)「夫婦同氏」の原則~結婚をすると夫婦は「同じ氏」になる
婚姻によって、夫婦はいずれかの氏を選択します。これを「夫婦同氏の原則(民法750条)」といいます。
現状、氏を変えるのはほとんどが妻の方だと思います。
(2)「離婚復氏」の原則
その後、夫婦が離婚すると夫婦同氏の効力も当然に失われ、婚姻によって氏を改めた者(ほとんどは妻)は、当然に「婚姻前の氏」に復します(民法767条1項)。
離婚後の夫婦間の子どもの氏はどうなる
(1)離婚後も子どもは夫の戸籍に入ったまま
離婚後、妻の戸籍は変動します(元の戸籍に戻るか、新しい戸籍を作る)が、子は夫の戸籍に入ったまま、つまり夫の氏を名乗り続けることになります。
その結果、妻と子どもの氏が異なるという現象が生じます。なお、これは親権が妻になった場合でも事情は変わりません。
(2)妻と子どもの氏が異なることの不便
たとえば、子どもが成人するまでは、何かにつけて書類に保護者名を記名しなければならない機会があります。
親子の氏が異なることから、それらの書類から第三者に子どもの両親の離婚を知られてしまうことになります。
また、親子の名字が違うということを気にする子どももいるでしょう。このように、妻や子どもが、氏が異なることを苦痛に感じる場面が少ないないことは想像に難くありません。
妻とこどもの氏を一致させる方法
冒頭で触れましたが、夫婦が離婚すると、婚姻によって氏を改めた妻は、当然に婚姻前の氏に復します。したがって、妻と子どもの氏を一致させるためには、妻が離婚後に夫の氏に変えるか、それとも子どもを妻の旧氏に変更するかの2通りの方法があります。
(1)子どもの氏を妻の氏に変更する
離婚後、子どもは夫の戸籍に入ったまま、すなわち夫の氏を名乗ります。したがって、子どもを妻の戸籍に入れることができれば、子どもは妻の氏(旧氏)を名乗ることができます。
●妻が離婚したときの戸籍
妻が離婚したときには、離婚復氏によって旧氏に戻るわけですが、元の戸籍(親の戸籍)に戻るか、もしくは、あらたに戸籍を作成する方法があります。
子どもを妻の戸籍に入れるためには、後者(あらたな戸籍を作成する)によって可能になります。
●家庭裁判所の手続きが必要になる
子どもを妻の戸籍に入れるためには、妻は離婚の際に、自分を筆頭者とする新しい戸籍を作らなければなりません。
親権者となっていれば、家庭裁判所に「子の氏の変更許可申立書」を提出し、子の氏の変更許可の審判の申立てをし、家庭裁判所の「許可審判書」と子どもの入籍届を市区長村役場に提出して手続きをおこないます。
(2)離婚後も夫の氏を名乗る
離婚によって婚姻前の氏に復した妻は、離婚の日から3か月以内に市区町村役場に届け出ることによって、離婚の際に称していた氏(夫の氏)を称することができます。これを「婚氏続称制度」といいます
●離婚の事実を周囲に知られにくい
母親の氏が変わらなければ、子どもが自分で言い出さない限り、第三者は親が離婚していることには気づきません。子育てという観点からみても、妻が婚姻時の姓を変えない方がスムーズにいくことは確かです。
離婚後の妻が夫の氏を選ぶ理由
妻と子どもを同じ氏にする2つのパターンを紹介しましたが、実態として多くの場合は、妻が夫の氏を選ぶケースです。そこには手続きの問題(家庭裁判所の許可が必要かどうか)と、子どもの氏を変えるかどうかという2つの理由があるようです。
妻が再婚した場合にはあらたな問題が
妻が再婚したときにも、戸籍(氏)をどうするかという問題はつきまといます。離婚をしたときに妻と子どもの氏を同じにしたとしても、母親が再婚をすれば、新たに子どもの戸籍(氏)問題が浮上してきます。
母親があらたな配偶者の氏を選択した場合、子どもは妻の旧氏を名乗ることになります。母と同じ氏を希望する場合、家庭裁判所の手続きが必要になります。





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