【相続問題】死後認知の仕組みについて
- 行政書士 服部祥明

- 4 時間前
- 読了時間: 5分

父親の生前に認知されなかった非嫡出子が、相続権を得るためには、死後認知という手続きが必要です。
今回は、死後認知が認められる要件や、手続きの流れ、認知後の遺産分割への影響について解説します。
認知とはなにか
認知とは、父親が自分の子どもであると法律上認める手続きです。嫡出子(戸籍に実子として提出された子ども)であれば、当然ですが、認知の手続きは不要です。
非嫡出子に対して認知がなされれば、その子どもは嫡出子と同等の権利(相続権や扶養)を受けることができます。
基本的に、認知は任意の手続きであり、父親には認知を行う法的義務はありません。
父親に認知を拒否された場合、母親は家庭裁判所に認知調停や認知訴訟を申し立てることが認められています。裁判所によって認知を認める判決が下されると、父親はその判決に従って、認知手続きを行わなければなりません。
認知の方法
そもそも、認知には以下の3つの方法があります。それぞれ解説します。
(1)生前認知
父親が、子どもが生まれたあとに、「認知届」を子どもの本籍地または住所地の市役所に提出するのが生前認知です。妊娠中に認知することも可能で、「胎児認知」といいます。
(2)遺言認知
遺言認知は、遺言によって父親が自分の子どもを認知する手続きです。
遺言書に非嫡出子を認知する旨が記載されている場合には遺言認知は成立し、父親の死後に、その子どもは法律上の子どもとして認められます。
(3)死後認知
父親の生存中に認知されなかった場合でも、非嫡出子は父親の死後に認知を請求できます。
子どもは、父親が亡くなった後に家庭裁判所に「死後認知請求」を申し立てます。裁判所は父親が生前にその子どもを認知する意思があったかどうかを判断し、認知を認めるかどうかを決定します。
死後認知の手続きは、父親の死亡後3年以内に行う必要があります。認知が認められれば、非嫡出子は出生時にさかのぼって相続権を持つことになります。その際には、遺産分割協議をやり直す必要が生じることがあります。
死後認知の手続き
死後認知手続きの流れは、以下の通りです。
①認知請求の訴状を家庭裁判所に提出する
②担当の検察官に訴状が送られ、ほかの相続人や利害関係人に連絡される
③裁判により認知請求が認められる
④役所に認知届を提出する
死後認知訴訟の注意点
(1)死後認知には訴訟が必要
父親本人は死亡しており。認知することができないので、死後認知を成立させるためには、非嫡出子自身(もしくは母親などの法定代理人や未成年後見人)が原告として、訴訟を提起するしかありません。ちなみに被告は検察官です。
死後認知訴訟の勝訴判決が確定すれば、死亡した父親と非嫡出子との間の親子関係が法律上確定します。
(2)提起できる期間は死後3年以内
提訴できるのは、父の死後3年以内に限られています。
この場合、相続税申告の期限のように「亡くなったことを知った日」ではなく、「死亡した日から3年」なので注意が必要です。
(3)相続人への通知
認知の訴訟を起こすと、利害関係人として父親の相続人(父の法律上の配偶者や子など)に、非嫡出子が訴訟を起こした事実が通達されます。
形式上は検察官が被告ですが、事実上は非嫡出子と相続人との争いになるケースがほとんどです。相続人は当事者ではありませんが、補助参加という形で訴訟に参加することが認められています。
(4)審理のポイント
審理においては、非嫡出子が父親との親子関係を証拠によって立証できるかどうかが重要なポイントになります。
①DNA鑑定
裁判では父子の血縁関係を立証する必要があります。
認知請求では、通常、DNA鑑定の結果が最も有力な証拠になります。可能であれば、父親の遺骨や遺髪などからDNAを採取しますが、これらの資料が入手できない場合は、近しい親族のDNAを採取することによって、科学的に立証します。
ただし、資料の提出は強制ではなく、あくまでも協力を求めるものです。親族は実質的な紛争相手ということもあり、協力が得られないこともあるでしょう。
②DNA以外の判断
DNA鑑定ができない場合は、血液型が一致しているか、顔や身体の特徴が似ているかといった科学的な見地や、父親と母親との出会いから妊娠、出産に至る経緯などについて、写真やメール、手紙、証言などの客観的な事情を考慮して、裁判所が判断します。
(3)死後認知請求の判決と役所への届出
死後認知請求を認める判決が出れば、市区町村への手続きにすすみます。非嫡出子もしくは代理人が、判決書と確定証明書を持参して役所に認知の届出をして、手続きは完了です。
死後認知で遺産分割協議はどうなる
死後認知が認められると、遺産分割にはどのような影響があるのでしょうか。認知が確定したタイミングが、遺産分割協議中か、協議後かによって対応が異なります。
(1)遺産分割中の場合
認知が認められたタイミングで、遺産分割協議がまだ終わっていない場合は、非嫡出子も相続人のひとりとして遺産分割協議に参加できます。
相続人全員の合意がなければ遺産分割協議書は作成できないので、自身の正当な権利として、相続権を主張できます。
(2)遺産分割後の場合
非嫡出子の認知が認められたタイミングで、すでに他の相続人同士で遺産分割協議が終わっていた場合は、協議のやり直しを求めることはできません。この場合、非嫡出子の権利として、法定相続分に応じた金銭の請求が認められています。
死後認知の請求や手続きは、裁判所を通して行うことになり、大変で複雑になりがちです。被相続人の配偶者や子と裁判を通じて争いになることも多く、自身だけで対応するのは難しいため、専門家に相談されることをおすすめします。





コメント