【相続問題】内縁妻は遺族年金を受け取ることができるか
- 行政書士 服部祥明

- 2025年12月1日
- 読了時間: 4分

結婚して姓を変えたくない、お互いが自立した関係でありたい、結婚して同じ戸籍にすることの意義が見いだせない等、様々な理由があって、あえて結婚せず、内縁関係でいることを選択するパートナーは増加傾向にあります。
日本の法律では、内縁のパートナーは法定相続人とは認められず、不利益を被ることが多いですが、その一方で、内縁が法律婚(結婚)と同様に扱われる事柄も一部あります。
そこで今回は、内縁夫の遺族年金の取扱いについて解説していきます。
内縁関係と財産の関係
(1)内縁夫の法定相続人になれない
法定相続人になることができる被相続人(亡くなった人)の配偶者とは、法律婚の配偶者であり、内縁関係にある妻は、法定相続人ではありません。
(2)内縁妻を生命保険金の受取人にできる場合がある
通常、生命保険金の受取人は2親等以内の親族とされていますが、条件によっては、内縁妻を受取人に指定できる場合があります(※別コラムで解説します)。
(3)内縁妻でも内縁夫の年金を受け取れる場合がある
事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められ、かつ、被保険者によって生計を維持していたと認められれば、内縁妻も法律婚の妻と同様に保護され、年金の受給が可能です。
内縁妻が遺族年金を受け取るための条件
内縁夫妻が以下の条件のいくつかに該当すれば、内縁関係として認められる可能性があります。
(1)住民票が同一世帯になっている
内縁関係の夫婦でも、住民票上の同じ世帯になれます。内縁の夫婦は、夫(未届)、妻(未届)と記載されます。
(2)2人の間に子どもがいて夫が認知している
内縁の妻との子を認知しても、内縁妻に相続権は発生しませんが、内縁妻との関係については、実質的な夫婦であると認識される可能性が高まります。
(3)どちらか一方の社会保険に扶養者として入っている
内縁関係でも夫の社会保険等の扶養に入れるので、扶養に入っている場合は、健康保険被保険者証の写しが内縁関係を証明する書類として有効です。
(4)扶養手当支給の記載がある給与明細
内縁夫の勤務先から扶養手当を受給している場合は、内縁妻を配偶者として認めていた証となります。
給与明細のほか、源泉徴収票や課税台帳の写しも、税法上扶養家族として扱われていたことを裏付ける書類として有効です。
(5)結婚式を挙げている
挙式や結婚披露宴などが行われている場合は、結婚式場等の証明書、挙式・披露宴の実施を証する書類があれば大切に保管しておきましょう。
(6)葬儀で喪主を務めたことの証拠
内縁夫の葬儀で喪主を務めた際に、会葬御礼等があれば、証拠として残しておきます。
社会通念上、喪主を務めたという事実は、内縁妻が配偶者と同等の地位を親族から認められた証拠であると解釈できます。
(7)生命保険の保険証の写し
生命保険の保険証に、内縁妻が夫の保険金の受取人になっていた場合、内縁関係が証明できるかもしれません。
遺族年金の種類
遺族年金には、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があります。
(1)遺族基礎年金の受給要件
遺族基礎年金は、国民年金の被保険者が死亡した場合などに支給されます。対象は、子どもがいる配偶者などで、内縁妻は該当しません。
(2)遺族厚生年金の受給要件
遺族厚生年金は、厚生年金保険の被保険者(会社員など)が死亡した場合などに支給されるものです。受給対象者は、亡くなった人に生計を維持されていた遺族のうち、優先順位が高い人で、内縁妻は該当しません。
内縁妻が受給できるのは「寡婦年金」と「死亡一時金」
遺族基礎年金の受け取りの条件を満たさない場合に支給されるのは、「寡婦年金」または「死亡一時金」で、内縁妻も受給対象です。
ただし、寡婦年金と死亡一時金の両方を受け取ることはできず、いずれかを選択することになります。
(1)死亡一時金の受給要件
死亡一時金は、国民年金の第1号被保険者として保険料を納めていた人が、何らの給付も受けることなく亡くなった場合に、遺族(内縁妻を含む)が受け取れる給付金です。
(2)寡婦年金の受給要件
寡婦年金は、自営業者など国民年金の第1号被保険者だった夫が、老齢基礎年金を受ける前に亡くなった場合に、その妻(内縁妻)が受け取ることができる年金です。
法律上の妻がいる場合には内縁妻は年金を受給できない?
内縁夫が離婚しておらず、法律上の妻が存在する場合、内縁妻は遺族年金を受給できるのでしょうか。
裁判例では、原則として、法律上の妻が遺族年金の受給権を有するとされています。
しかし、婚姻関係が形骸化し、かつ、その状態が長期間継続している場合は、事実上の離婚状態にあるかどうかについては、別居の経緯や期間等を総合考慮して判断され、例外的に内縁の妻が遺族年金を受給できるケースがあると考えられています。





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