【相続問題】遺産分割協議を無効にできるケースとは
- 行政書士 服部祥明

- 2025年12月2日
- 読了時間: 4分

遺産分割協議書作成後にトラブルが発覚し、納得できない場合に、法律上の一定の条件を満たせれば、内容の無効や、取り消しを主張することが可能です。
今回は、遺産分割協議書作成後に起こりうるトラブルの具体例と対処法を詳しく解説します。
無効と取り消し
「無効」と「取消し」の間には、当事者による意思表示が必要かどうかに違いがあります。
すなわち、無効の場合は法律上当然無効なので、なんらかの意思表示は不要ですが、取消しの場合は、取消す旨の意思表示がない限りは有効なものと扱われます。
遺産分割協議が無効になるケース
最初に、遺産分割協議が無効になるケースを解説します。
(1)全ての相続人が協議に参加していなかった
遺産分割協議には、相続権のある相続人全員が参加して、遺産分割方法に同意する必要があります。参加すべき相続人がひとりでも欠けていれば、遺産分割協議は無効になり、やり直しが必要です。
消息不明の相続人や、遺産分割協議に応じない相続人がいる場合は、家庭裁判所に依頼して、不在者財産管理人(行方不明者の財産を代わりに管理する者)を選任する、もしくは、失踪宣告(生死が7年以上不明な者を法律上死亡したものとみなす)をする、のいずれかの方法で対応する必要があります。
(2)意思能力のない相続人が参加していた
民法には、意思能力を有しない者の法律行為は無効になる旨が明記されています。
たとえば、協議に参加した相続人が重い精神病や認知症患者であった場合は、意思能力を有しない者とみなされ、遺産相続協議のやり直しが必要です。協議をやり直す際は、相続人の代理として成年後見人を選任して手続きを進めます。
(3)あらたに相続人が現われた
遺産分割協議書作成後に、あらたに相続人が現われるケースがあります。
たとえば、被相続人の非嫡出子(法律上の婚姻関係がない相手との間の子)が、被相続人の没後に認知されると、相続人になります。また、胎児についても、遺産分割協議後に出産した際には相続人になります。
すでに作成した遺産分割協議書は無効になり、あらたな相続人を含めて、遺産分割協議のやり直しが必要になります。
遺産分割協議を取り消せる可能性があるケース
以下の場合には錯誤や詐欺が認められ、遺産分割協議書を取り消せる場合があります。
(1)遺産を隠していた
たとえば、被相続人と同居していた相続人が、他の相続人が知らない現金の存在を把握していたケースなどが考えられます。
(2)生前贈与があったことを黙っていた
生前贈与とは、被相続人が生きているうちに、任意の相手に所有財産を譲り渡す行為です。
遺産分割協議書作成後に、一部の相続人が被相続人から生前贈与を受けていたことが発覚し、トラブルになるケースは少なくありません。
本来、遺産分割協議では、生前贈与を受けた相続人の相続分については、生前贈与分を差し引くなどの調整が必要なのです。
(3)相続財産の売却価格を実際より低く伝えられた
遺産分割の際に、被相続人の不動産を売却して、現金化してから分割する方法があります。
相続人の一人が代表して売却手続きをすすめ、遺産分割協議書作成後に売却価格を実際より低く申告していたことが発覚すると、トラブルに発展します。
(4)分割前の遺産の使い込みがあった
被相続人の生前から、一部の相続人が財産を管理し、預貯金などを自由に引き出せる状況であることは少なくありません。
遺産分割協議書作成後に、遺産が使い込まれていることが発覚し、トラブルになる事例があります。
遺産分割協議書の取り消しの注意点
(1)「納得できない」という理由だけで遺産分割は取り消せない
遺産分割協議書作成後に遺産分割を取り消せるのは、無効になる条件がある場合、もしくは錯誤や詐欺などが発覚した場合に限られます。
遺産分割協議書の内容の見落としや、理解不足などの理由でも、取り消しはできません。
(2)取消権の時効は5年と20年
民法には取消権の期限が明記されており、錯誤や詐欺の事実に気づいてから5年で時効を迎えます。
また、錯誤や詐欺に気づくかどうかに関わらず、遺産分割から20年が経過すると、自動的に取消権は失われ、以降は遺産分割を取り消しできません。
(3)第三者に譲渡された財産は取り消せない
遺産分割協議書作成後に、騙されたことに気づいた時点で、すでに遺産が第三者に譲渡されている場合は、善意の第三者を保護する必要があり、基本的に取消権は行使できません。
遺産分割協議の取り消し方法
遺産分割の取り消しについて相続人全員が合意すれば、遺産分割協議をやり直し、合意した修正内容が有効になります。
全員の相続人が取り消しに合意しないときは、家庭裁判所に遺産分割調停(和解)の申し立てを行います。
和解が成立しない場合は、自動的に遺産分割無効確認訴訟に移行します。最終的に、裁判所の判断により遺産分割の取り消しの可否が決まります。





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