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【相続問題】アパート経営者のための家族信託

  • 執筆者の写真: 行政書士 服部祥明
    行政書士 服部祥明
  • 1 日前
  • 読了時間: 4分

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アパート経営において課題となる点のひとつは、経営者の認知症対策です。

アパート経営には、オーナーの「本人の意思確認」が必要となる場面が多くあります。オーナーが判断力を失うと、「入居者や賃料収支を正しく把握できない」「効果的な賃貸募集ができない」「修繕の契約ができない」「将来のアパートの承継先を決められない」といった問題が起こる懸念があります。

このような場面で効果を発揮するのが、家族信託です。

 

  成年後見制度は不都合が生じやすい

オーナーが認知症を発症してしまった場合に、「成年後見人制度」を利用する事で、「成年後見人」となった人が、オーナーの代理をすることができます。

しかし、成年後見人制度は、何かと不都合が生じやすい側面があります。意思決定の最終権限が家庭裁判所にあることや、そのための判断の遅れ、被後見人(オーナー)の財産が目減りする行為ができないなどの問題が挙げられます。

 

  「家族信託」は認知症対策に最適な財産管理方法

家族信託は、認知症対策に最適な財産管理の手法のひとつです。

 委託者(オーナー)が、信頼のおける家族や親族など(受託者)に、財産の管理や運用、処分を託し、そこから発生する利益を指定された人(受益者)が受け取る、信託契約です。

なお、受益者は委託者であることが多いです。

 

  アパート経営に家族信託を利用するメリット

(1)受託者(親族)の判断でアパート運営できる

アパート経営において重要な仕事は、賃貸オーナーによる、管理、運用、処分です。

いずれも、契約書の締結時に、オーナーの意思確認が求められますが、オーナーの判断能力が失われると、いずれの契約行為もできなくなってしまいます。

このようなケースで家族信託が発動すると、オーナーとして賃料収入を受けるメリット(受益)はそのままで、契約事などの事務を、信頼できる家族(受託者)に任せる事が可能です。

(2)生前贈与と家族信託の違い

生前贈与によって、親族に不動産を継承する方法もありますが、所有権そのものが移動してしまうため、名義変更後の賃料収入は親族のものになります。

また、相続税より税率が高い、贈与税の負担も発生します。

一方、家族信託では、前述のように、賃料収入は引き続きオーナーのものであり、贈与税や不動産取得税は発生しません。

委託者であるオーナーの判断能力が健在なうちから、家族信託を契約すれば、最初は不慣れなアパート経営のノウハウを受託者に伝授できるというメリットもあります。

(3)委託者や受託者が破産してもアパートは差押えの対象にならない

信託契約内で信託財産として指定された不動産や金銭は、オーナーと受託者、それぞれの固有財産と区別されます。

そのため、もし、オーナーや受託者が破産しても、信託財産は差押えの対象外となります。

(4)アパートの最終的な承継先を自由に設定できる

一般的に、財産を特定の親族に承継させる方法として、遺言という方法があります。

家族信託にも、遺言同様の効果を得る契約設計をすることが可能です。

さらに、信託契約の受益者を連続して指定することができるので、たとえば、(オーナー⇒配偶者⇒長男)といった具合に、法定相続に縛られない財産の承継も可能です。

 

  アパート経営と家族信託の盲点

(1)相続のためには複合的な対策が必要

信託財産は、委託者の固有財産とは区別されます。

したがって、信託財産以外の賃貸オーナーの固有財産の継承については、家族信託とは別の対策が必要です。

遺産分割対策としては遺言書を検討しましょう。公正証書により、家族信託と遺言書を同時に構築するのがおすすめです。

(2)ローン対策

相続対策の一環として、金融機関で融資を受けてアパートを建て、現在返済中のケースもあります。アパートローンが設定されている場合、その不動産を信託財産にする場合は、注意が必要です。

そもそも、アパートローン契約時の金銭消費貸借契約で、融資対象の不動産を信託財産にできない旨の特約が設定されているケースがあるのです。あるいは、ローンの返済方法について、制限されることもあります。

アパートローンを設定している場合は、家族信託を締結する前に、まずは、金融機関に相談することが重要です。

 
 
 

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