【相続問題】相続放棄は生前にできない
- 行政書士 服部祥明

- 2025年12月23日
- 読了時間: 3分

家族が亡くなった際に、法定相続人は、故人(被相続人)の遺産を相続するか、放棄するのか、決断が迫られます。
被相続人の借金も相続の対象です。このような場合に、被相続人の債権者から借金の返済を要求されないために、相続放棄によって相続権を放棄することが可能です。
相続放棄をするためには、特別な手続きが必要です。
親が大きな借金を抱えていた場合、親が生きているうちに、あらかじめ手続きを済ませたいと考える方もいるでしょう。しかし、相続放棄は被相続人が亡くなってからおこなう必要があり、生前のうちに手続きをすることはできません。
相続放棄と債務放棄の関係
(1)被相続人の生前中に相続人は相続放棄できない
相続放棄は、預貯金などのプラスの財産とともに、借金などのマイナスの財産もすべて放棄できる手続きです。
民法は、相続放棄について、「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に、単純もしくは限定の承認または放棄をしなければならない」と規定しており、生前の相続放棄は認めていません。
たとえば、相続放棄の意思を明確にするために、「相続する意思はありません」といった念書を事前に作成しておいたとしても、法的な効力はありません。
(2)被相続人が生前でも遺留分の放棄はできる
遺留分の放棄については、被相続人が亡くなる前でも有効です。
遺留分の放棄とは、法律上一定の相続人に認められる「遺留分」を放棄する手続きです。
そもそも遺留分とは、被相続人の兄弟・姉妹以外の法定相続人に認められた、最低限受け取れる遺産の割合を指します。法定相続人が相続において損をしないよう、法律上認められた権利で、有効な遺言書があっても、遺留分は侵害できません。
たとえ、遺言書があった場合でも、最低限の財産を相続できる権利が遺留分ですが、本来は主張できる遺留分を、生前に放棄することが認められています。
生前の遺留分放棄は、被相続人の存命中に、家庭裁判所の許可を得て行います。
(3)遺留分の放棄では借金の債務は回避できない
生前に遺留分の放棄をするメリットは、ほかの相続人に対して自身は遺産を受け取る意思がないことを明確に示すことによって、相続トラブルに巻き込まれることを防ぐことです。
ただし、遺留分の放棄は、あくまでも遺留分(相続財産の一部)を放棄できるだけの手続きであって、相続開始後の相続権を放棄することではありません。したがって、遺留分を放棄しても、それだけでは借金の相続は回避できないのです。
(4)借金を回避するためには相続放棄するしかない
したがって、被相続人の借金を回避するためには、被相続人が亡くなったあとに、相続放棄の手続きをする必要があります。
もしもに備えて相続放棄の準備を進めておく
生前から被相続人に大きな借金があることがわかっている場合は、亡くなってから慌てないように、相続放棄の準備を進めておきましょう。
相続放棄の手続きは、「被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所」に、必要書類を提出して行います。
相続放棄をする際の必要書類の一例は以下のとおりです。
●相続放棄の申述書
●被相続人の住民票除票または戸籍附票
●申述人(放棄する人)の戸籍謄本
●被相続人について死亡の記載がある戸籍謄本
相続する人の立場によっては、追加の書類が必要となることもあるので、あらかじめ、裁判所のホームページで必要書類を確認しておきましょう。手続き費用として収入印紙(800円分)が必要です。
3か月の期限を過ぎてしまうと相続放棄が認められなくなってしまうため、早めに準備を進めておきましょう。





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