【相続問題】自筆証書遺言が無効になるケースについて
- 行政書士 服部祥明

- 1月22日
- 読了時間: 4分

おもな遺言書の形式として、自筆証書遺言と公正証書遺言の2種類があります。
どの方式にも一長一短ありますが、たとえば、遺言者が自分一人で書くことができる自筆証書遺言の方が、公正証書遺言よりも気軽に書くことができると考える人が多いかもしれません。
しかし、その遺言書が有効かどうかについては、いくつかの注意点があります。
今回は、自筆証書遺言を作成する際の注意点と、弊事務所が公正証書遺言の選択をおすすめする理由について解説します。
自筆証書遺言書が選ばれる理由と注意点
公正証書遺言を比較して、自筆証書遺言は、手間がかからず簡単に作成でき、費用もかからないため、手軽に取り組むことができます。
また、法務局での自筆証書遺言の保管制度を利用することにより、紛失のリスクがなくなり、検認が不要になるなど、利用の幅が広がっています。
その一方で、自筆証書遺言には、書式や内容の不備などにより、無効となるリスクもあります。
自筆証書遺言のルール
以下では、自筆証書遺言を有効なものにするための基本的なルールを紹介します。
(1)作成日を記載する
作成日付は西暦でも和暦でも構いませんが、遺言書には、作成日付を正確に記載しなければなりません。たとえば、「令和●年1月吉日」という日付は無効です。
(2)遺言者は氏名を自署し押印する
自筆証書遺言には、遺言者氏名を自署し押印しなければなりません。親族であっても、代筆は認められません。
(3)共同遺言は禁止
配偶者や親子であっても、複数の者が同じ遺言書で遺言することは認められていません。
(4)遺言能力の有無
遺言能力がないと判断される人が作成した遺言書は無効です。
①年齢制限
15歳未満の人が作成した遺言書は無効です。
②認知能力
認知症などによる遺言能力の有無の判定は、病状、遺言内容、受贈者との関係などを総合的に考慮して判断します。
訴訟になった場合には裁判所がこれらの要素を評価して、遺言書の有効性を決定します。医師の診断書や意見が重要な証拠となることがあります。
(5)内容が公序良俗に反しないかどうか
遺言書の内容が公序良俗に反している場合は無効です。
たとえば、不倫関係を継続させることを目的とした、愛人や不倫相手への贈与は無効となる場合があります。
(6)錯誤や詐欺、強迫、偽造などの有無
詐欺や脅迫によって作成された遺言書は無効となり、詐欺や脅迫を行った人物が相続人であれば、相続権を剝奪されます。
偽造された遺言書は当然無効です。遺言書を偽造した人が相続人であれば、相続権を失います。
自筆証書遺言の限界
自筆証書遺言の記載が法定要件に反していれば無効になります。
また、相続発生後の手続きには家庭裁判所による「検認」という手続きが必要です。検認を受けていない自筆証書遺言を根拠にして、不動産の名義変更登記や預貯金解約等の相続手続きをすることはできません。
検認を受けた場合でも、記載内容が明確でないために、遺言の内容を実現できないケースがしばしば見受けられます。自筆証書遺言書保管制度を利用した場合は検認不要となりますが、遺言書の内容の有効性を担保するものではないので注意が必要です。
検認は、あくまでも、「遺言書が法定要件を満たしているかどうか」を担保する手続きにすぎないからです。
こんな内容の自筆証書遺言は危険
自筆証書遺言をつくるためには、遺言者にある程度の法知識が要求されます。
たとえば、このような内容の自筆証書遺言は無効になるリスクがあります。
①「自宅は甲に相続させる」「別宅は乙に相続させる」という記載
かりに、遺言内容が「所有する不動産のすべてを甲に相続させる」という内容であれば、問題なく相続登記をすることができるでしょう。しかし、上記のケースでは「自宅」「別宅」との表記があり、どちらが自宅で別宅なのかが不正確です。
これらは建物だけなのか、それとも敷地を含むのかも不明です。
②「所有するAマンションを丙に相続させる」
当該のAマンションが区分所有のことであれば、部屋番号まで記載がなければ特定できません。
③不動産が住所表記されている
遺言書には、住民票の住所ではなく、「地番」などを記載するべきです。
土地であれば「所在と地番」を、建物であれば「所在と家屋番号」を明記します。
今回の遺言書では「自宅」「別宅」としか記載されていないため、まずはその所在等を明らかにします。また、ここでいう自宅・別宅とは併せて検討が必要となります。
公正証書遺言を選択すべき理由
公正証書遺言を選択すべき理由は、遺言書が無効になる恐れがもっとも低いからです。
偽造等の恐れがなく、原本データが公証役場で保管されるため、紛失の恐れはありません。検認手続も不要です。
費用や手間はかかりますが、遺言が無効になるリスクを大幅に軽減し、相続時のトラブルを防ぐ効果は非常に高いといえます。
遺言書の作成を検討されている場合は、ぜひ公正証書を選んでください。





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