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【相続問題】親が認知症になった場合に家族信託は作成できるか

  • 執筆者の写真: 行政書士 服部祥明
    行政書士 服部祥明
  • 12 分前
  • 読了時間: 4分

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家族信託とは、家族に財産の管理や運用を任せる信託契約のことです。

「自分が将来的に認知症になった後に、子どもに財産の管理を任せたい」という場面で活用されています。

ただし、家族信託はいつでも結べるというわけではありません。

大前提として、本人に判断能力があるかどうかという問題があるからです。タイミングを逃すと、契約自体が不可能になることもあるため、注意が必要です。

 

  認知症を発症すると家族信託は締結できないだろうか

(1)認知症発症後に契約できない理由

家族信託契約が有効に成立するためには、契約当事者(委託者である親)が契約内容を理解し、自分の意思で判断できる状態であることが必須条件となります。

したがって、契約の内容を判断できない重度の認知症の場合は、家族信託契約を結ぶことができません。

(2)初期や軽度の認知症であれば契約可能なケースがある

しかし、初期や軽度の認知症であれば、家族信託を結べる可能性は十分にあります。実際に、医師から正式に認知症の診断を受けている場合も、同様に可能性があります。

なぜなら、判断能力があるかどうかの判断は、医師ではなく公証人によって行われるからです。医師から認知症と診断されていても、公証人が「契約内容を理解している」と判断すれば、家族信託契約を結ぶことが可能です。

 

  判断能力の基準

それでは、具体的にどのような基準で判断能力の有無が評価されるのでしょうか。

(1)公証人の判断の基本

家族信託契約を成立させるための基準において、「要介護度」と「判断能力」は、直接的にはリンクしません。それと同様に、「施設入所中」や「入院中」という事実だけで、判断能力を否定されるわけではありません。

なお、信託契約に関して、家族全員の同意と協力が得られているケースでは、公証人の心象としても肯定的だと考えられます。

(2)公証人の視点
●氏名、生年月日、住所を正確に言えるか

公証人は委託者の身元を確認するために、印鑑証明や運転免許証などの身分証明書に記載されている情報を本人に確認します。

その際に、住所、氏名、生年月日が答えられない状況であると、判断能力について疑問を持たざるを得ません。

●契約書に署名できるか

契約書に自分の意思で署名できることも重要です。

身体的な理由で署名が難しい場合に、介助者のサポートを受けて署名することは認められていますが、この場合も、「署名する意思」が本人にあることが求められます。

●契約内容を理解しているか

・どの財産を信託するのか

・誰に財産管理を任せるのか

・相続後は誰に信託財産を遺したいのか

れらの項目について明確に答えられれば、公証人は委託者に「正常な判断能力がある」と認めます。

 

  軽度の認知症で家族信託を締結する際の注意点

初期、軽度の認知症と疑われる親の財産を家族信託する際には、いくつかの重要な注意点があります。これらの注意点を理解し、適切に対処することで、家族信託の手続きをスムーズに進めることができます。

(1)家族全員の同意が必要

家族信託は、財産を預ける委託者と預かる受託者の間で成立します。

形式上は、受託者以外の家族の同意がなくても契約は可能ですが、家族全員の同意を得て締結することが推奨されています。

なぜなら、家族全員が納得していないと、後々トラブルになる可能性が高いからです。

たとえば、長男が受託者の場合、たとえ財産の管理が正しくされていても、ほかの兄弟が不満や疑いを持つ可能性があります。

このような状況を防ぐためにも、家族全員で家族信託の内容を話し合い、全員が納得した上で契約を進めることが重要です。

(2)判断能力があったことの客観的な資料を残す

信託契約を結ぶ際には、契約者の判断能力があったことを証明する客観的な資料を残すことが重要です。

判断能力を有する証明に関しては、医師の診断書や面談記録のほか、なにより、公正証書にするのは、これが理由です。

 

  家族信託契約書の作成はかならず専門家に依頼

(1)一般の人が契約書を作成するのは難しい

家族信託は比較的あたらしい契約形態で、事例もまだまだ少ないです。

家族の財産に応じてオリジナルの契約書を構築する必要もあるので、一般の人が契約書を作成するのは、かなり難しいでしょう。

家族信託の公正証書を作成する際には、専門家に依頼することが重要です。

(2)タイミングを逃さないこと

軽度認知障害(MCI)と診断された人の10~30%が、1年以内に本格的な認知症へ進行するといわれています。

そのため、「まだ大丈夫」と判断して先延ばしにすると、契約を進めようとした時には既に判断能力が失われていたと、後悔する結果になるかもしれません。

また、認知症には、「良い日と悪い日」があり、ある日は判断能力があっても、数日後には低下していることもあるため、タイミングを逃さないことが重要です。

 
 
 

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