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【相続問題】認知症の親がつくった遺言書は有効か

  • 執筆者の写真: 行政書士 服部祥明
    行政書士 服部祥明
  • 1月22日
  • 読了時間: 5分


遺言書は、自分の財産をどのように分配するかという意思表示をする文書です。

もっとも、遺言書は自由勝手に作成できるわけでなく、法律で定められた要件を満たす必要があります。

「認知症の家族が書いた遺言書は有効ですか?」という質問を受けることがありますが、結論からいうと、認知症だからという理由で、遺言書が直ちに無効となるわけではなく、事物に対する判断力がある方なら、認知症であっても有効な遺言書を作成できます。

重要な基準となるのは、「遺言能力」の有無です。

 

  遺言能力を構成する要素

遺言能力とは、遺言の内容を理解し、遺言の結果を弁識しうるに足りる意思能力のことです。

現在、本人が認知症であるかどうかは、直接的な争点になりません。直接的な争点となるのは、「遺言能力」の有無です。

具体的には、以下の要素を満たしている必要がありますが、遺言作成時の遺言能力の有無や合理性については、個々のケースごとに総合的に判断されるという前提を押さえておきましょう。

(1)15歳以上であること

民法で、15歳未満の人は遺言書を作成できないと定められています。法定代理人(親など)の同意があっても、法的に有効な遺言書を作成することはできません。

(2)意思能力があること

自分の意思で遺言の内容を決定し、それを表現できる能力(意思能力)が必要です。

自分の財産が何であるかを認識し、それを誰にどのように相続させたいかという意思を形成し、言葉や文字で表現できる能力が求められます。

(3)内容を理解する能力があること

遺言書に記載する内容を理解し、その内容が自身の財産にどのような影響を与えるかを認識できる能力を有する必要があります。

たとえば、特定の財産を特定の人に相続させることや、遺贈をすることの意味を理解していることが求められます。

(4)遺言内容の合理性

遺言の内容が、社会通念上、合理的で妥当なものであるかを判断できる能力が必要です。

極端に不公平な内容や、現実的に実行不可能な内容の遺言は、たとえ本人の意思に基づいて作成されたとしても、無効と判断されます。

たとえば、「絶縁状態にある息子に、全財産を相続させたい」という内容であれば、遺言者の意思に反しているのではないかと、合理性を疑われる可能性が高くなるでしょう。

 

  認知症の親は有効な遺言書を作成できるか

認知症と診断されたら遺言書は作れないという意見は、かならずしも正確ではありません。

認知症と一口に言っても、その症状は軽度なものから重度なものまで様々です。認知症の進行度合いによって、有効な遺言書を作成できる可能性があります。

遺言書を作成する際には、遺言能力が争われたときに備えて、できるだけ多く、客観的な証拠を残しておきましょう。

(1)遺言者作成時点の状況が重要

重要なのは、遺言書を作成する時点で、「遺言能力」を有しているかどうかです。

たとえ認知症と診断されていても、自身の意思を明確に伝え、遺言の内容を理解し、その結果を判断できる状態であれば、有効な遺言書を作成できると考えられます。

もっとも、現実的には、認知症と診断される前、あるいは軽度のうちに遺言書作成を準備すべきであり、同時に遺言書の有効性を担保するための対策を講じておくことが大切です。

(2)遺言能力の有無を医師に確認する

認知症の進行度合いを把握するために、医師に診察を依頼して、遺言能力の有無について診断書を作成してもらいましょう。

診断書は、遺言書作成時に、親が遺言能力を有していたことを客観的に証明する重要な資料となり、後々、遺言書の有効性を巡って争いが生じた場合に、有力な証拠として役立ちます。

①長谷川式認知症スケール

長谷川式認知症スケールは、認知機能のレベルを推定するために行われる簡易的な知能検査のことです。

30点満点で算定され、20点以下であれば、認知症の疑いがあるとされています。なかでも10点以下であれば、意思能力がないと判断される可能性が高くなります。

ただし、遺言の内容が簡単であるなどの事情があれば10点以下のスコアでも意思能力が認められた裁判例や、逆に、10点以上であっても会話が困難であったことなどを理由に、意思能力が否定された裁判例もあり、判断は認知症スケールの点数に限らず、大変複雑です。

②医療記録や介護記録から確認する

医師の診断書や介護記録などから、遺言作成当時に遺言者は意思疎通が可能であったか、金銭管理ができていたかなどが確認できる場合があります。

看護記録には遺言者の当時の様子が記録されている場合があるので、そのような事情も考慮されます。

(3)状況証拠があるか

遺言書の内容が、本当に親自身の意思に基づいていることを証明するために、状況証拠を残しておくことも重要です。

遺言書作成時に、医師や第三者が同席して、証人になってもらうことが考えられます。

(4)公正証書遺言で作成する

遺言書には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類がありますが、認知症の親が遺言書を作成する場合は、公正証書遺言を選択することを推奨します。

公正証書遺言は、公証人が作成に関与するため、形式的な不備や偽造のリスクが低く、遺言書の有効性をより確実に担保できます。ただし、公証人の意思確認の結果、作成できない場合があるので注意してください。

 
 
 

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