【相続問題】遺言を撤回する方法について
- 行政書士 服部祥明

- 21 時間前
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遺言書を作成したものの、その後、財産の内容が大きく変わったり、家族との関係性が変わった場合、その遺言書の内容を撤回したいとか、変更したいと考えるケースもあると思います。
このような場合、どのような点に注意すべきでしょうか。正しい方法で手続きを行わないと、遺言書の撤回が無効になってしまうことも考えられます。
遺言には、おもな形式として「自筆証書遺言」「公正証書遺言」があります。撤回の手続については、それぞれ異なるので、それぞれの形式に従った処理が求められます。
遺言はいつでも撤回できる
民法は、「遺言者はいつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる」と規定しています。
遺言を撤回(変更)することは自由ですが、遺言は厳格な方式に従って作成されなければならないものなので、撤回するときにも、その方式に従うことが必要とされます。
遺言を撤回するルール
自筆証書遺言を撤回するときには、必ず自筆証書遺言の方式によらなければならないということはありません。自筆証書遺言を公正証書遺言の方式で撤回することも可能です。同様に、公正証書の場合も、自筆証書の方式で撤回する事が認められています。
(1)自筆証書遺言の撤回
自筆証書遺言については、全面的な撤回が可能ですが、部分的に加除を行うなどの変更をすることもできます。
具体的な記載方法としては、変更したい箇所に加筆または削除を行い、変更した箇所に押印ししたうえで、欄外や末尾に、「○○頁○○行目○○字削除○○字加筆」などと記載して、自筆で署名します。
(2)公正証書遺言の撤回
作成された公正証書遺言の一部を変更する手続きはありません。内容を変えたいときには、新たに遺言書を作り直す必要があります。
撤回する場合は、公正証書の方式のほか、自筆証書遺言あるいは秘密証書遺言の方式によっても有効ですが、一般的には、公正証書遺言を撤回するときには、公正証書遺言の方式によるのが通常です。
実質上、変更や撤回とみなされるケース
複数の遺言書が存在している場合、後の遺言書が有効となります。
たとえば、以前作成した遺言書の内容を否定する、あらたな遺言者が作成されたときは、あらたな遺言書で否定された部分については、その部分の変更が認められます。
また、後の遺言書が、全面的に前の遺言書を否定する内容であれば、事実上、前の遺言書を撤回したとみなされます。
遺言書を破棄するとどうなる
(1)自筆証書遺言の場合
自筆証書遺言の場合、遺言書を書いた本人(遺言者)が、遺言書をシュレッダーにかけたり、燃やすなどして、完全に復元できない状態にすれば、遺言書は無効化されます。当然ですが、遺言者以外が処分してはいけません。
自筆証書遺言書は、法務局の保管制度を利用することが可能です。
保管されている自筆証書遺言を撤回する際には、法務局に自ら出頭して、返還を申し出ます。遺言書が返還されたら、確実に廃棄しましょう。
(2)公正証書遺言の場合
公正証書遺言の原本は公証役場で保管されています。手元にある遺言書は謄本なので、破棄しても遺言の効力には影響がありません。
公正証書遺言を撤回するためには、あたらしい遺言を作成して撤回する必要があります。手元にある以前の謄本については、紛らわしいので破棄しておきましょう。
遺言書の撤回は専門家に相談してください
遺言書の撤回は、法律に定められた形式に従って行う必要があります。
不適切な撤回は、遺言書が無効になるリスクを生じさせ、遺言者の意思が反映されない可能性があります。遺言書を確実に撤回し、新たな遺言を有効に作成するためには、専門家のサポートを受けることを、ぜひご検討ください。





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