【相続問題】デジタル遺産トラブルの回避方法について
- 行政書士 服部祥明

- 2025年11月11日
- 読了時間: 7分
更新日:2025年11月21日

一般的に「デジタル遺産」とは、亡くなった人がデジタル形式で保管していた仮想通貨やFX、電子マネー、クレジットカードのポイントなどを指します。
不動産や預金などのような資産の現物がなく、本人しかわからない情報で管理されているため、相続人がその存在を見つけられないといったトラブルが多く報告されています。
そこで今回は、デジタル遺産について、その問題点を解説します。
デジタル遺産の種類
デジタル遺産には以下のものが含まれます。
(1) 仮想通貨(暗号資産)
仮想通貨とは、情報通信ネットワーク上にある端末同士を直接接続するブロックチェーン技術を用いて取引されるデジタル資産のことで、ビットコイン(BTC)が有名です。
(2)電子マネー
近年のキャッシュレス化の進展に伴い、幅広く普及した電子マネーには以下のものがあります。
・電子マネー(PayPay、d払い、楽天ペイなど)
・交通系電子マネー
・クレジットカード系電子マネー(iD、QUICPayなど)
・航空会社のマイレージ
(3)デジタル著作物の著作権
パソコンやスマートフォンを用いて、音楽や画像、動画などの著作物を制作する人が増えています。著作物には著作権が認められ、その訴求力に応じて財産的価値が生じます。
デジタル遺産の問題点
(1)本人しか知らない情報で管理されている
デジタル遺産は、本人にしかわからない情報で管理されています。
パソコンやスマートフォンなどのデジタル機器のロックを解除するパスワードのほか、デジタル遺産が管理されているログインIDやパスワードを入力しないと、デジタル遺産の詳細を確認することができません。間違ったパスワードを何度かタップすると、ログインできなくなってしまうこともあります。
(2)そもそも発見できない場合が多い
デジタル遺産は、本人以外が、その存在を見つけることが難しいです。
基本的に郵便物がなく、故人が利用していたデジタル端末のアプリや、利用していたメールの受信箱をチェックしないと判明しないためです。
そのため、相続人がデジタル遺産の存在自体に気づかないケースが多くみられます。
(3)相続手続きが煩雑
窓口は全てオンライン化されていることが多く、名義変更や解約は煩雑です。そもそも相続時の資産引継ぎの取り扱いについて、明確に定められていないケースもあります。
デジタル遺産を放置しておくとどうなるか
相続において問題点が多いデジタル遺産ですが、そのまま放置するのは危険です。
(1)遺産分割協議をやり直す必要がある
相続が発生すると、相続人全員で遺産分割協議を行い、各相続人による分割方法を決めます。
しかし、遺産分割協議がまとまってからデジタル遺産の存在が判明した場合は、あらためてデジタル遺産についての遺産分割協議をしなくてはなりません。
(2)投資の運用損発生の可能性
FXはリスクの高い投資商品です。小さな自己資金で大きな投資効果を得る「レバレッジ取引」を利用している場合、短期間のうちに大きな損失が発生するリスクがあります。相続人が取引の実態を知らないうちに、含み損がどんどん拡大していたということもあり得ます。
これは仮想通貨や株式投資も同様です。
(3)税金面での不利益
FXのほか、ネット証券の株式、仮想通貨などは、「相続発生時の時価」によって、相続税の評価額を計算します。
デジタル遺産の存在に気付かずに放置した場合、相続発生時に比べて価値が下がっていると、相続税の額が売却価格を上回ってしまうなどの損失を受けることもあります。
(4)スマホの解約によるトラブル
使われなくなったスマホを早く契約したい気持ちもわかりますが、所有者が亡くなったあと、すぐにスマホを解約するのは危険です。
最近は、スマホを財布代わりに使うサービスが増えています。故人がスマホ決済サービスに財産を所有していたのに、気づかないでスマートフォンを解約すると、その後の手続は大変です。
(5)定期課金サービスの継続
音楽や映画など、月額費用が発生する定期課金サービスがそのままであれば、相続発生後も料金を払い続けることになります。そのほかの契約についても、自動更新になっていれば、いつまでも料金の支払いが止まりません。
契約者によるデジタル財産の管理のポイント
契約者側として、上記のようなトラブルを避けるための対策を講じておきましょう。
(1)デジタルサービスの見直し
利用サービスを定期的に見直し、使わないクレジットカードやデジタルサービスなどは解約しましょう。
(2)データの一括管理
必要な各種サービスや金融情報は、スマートフォンで一括管理しましょう。
スマートフォンのロック解除さえできれば、遺族がデジタル遺産を見つけやすくなります。アプリを目立つ場所に整理して、可視化しておくといいでしょう。
(3)資産の状況を家族と共有する
デジタル遺産の資産額や利用しているサービスや口座、ログイン方法や処分方法について、家族に話しておきましょう。
書面やデータにまとめたリスト、エンディングノートや財産目録(財産の一覧表)を作成しておけば、財産の中身や処分の仕方を家族に伝えられます。
(4)バックアップデータを残す
デジタル遺産にアクセスするためのログイン情報をパソコンやスマートフォンに記録している場合、もしその端末が故障するとアクセスできなくなるリスクがあります。記録が永久に失われてしまうリスクもあります。
デジタル遺産に関連する端末のデータは、SSD、HDD、USBメモリなどの記録媒体や、クラウドサービスを用いて、定期的にバックアップをとっておきましょう。
(5)遺言書を作成する
遺産の分割方法を記載した遺言書を作成して遺産目録を添付することで、デジタル遺産の存在を詳細に知らせることができます。
相続人は相続手続きがしやすくなり、相続人間の遺産分割トラブルも回避できます。
残された家族がデジタル遺産を確認する方法
次に、相続人側がデジタル遺産を探す方法をいくつか提案します。
相続人らがその存在を認識することが困難なケースもありますが、放置しておくとトラブルに発展する可能性があるため、可能な方法を駆使してしっかり調査しましょう。
(1)デジタル機器のパスワードを解除する
最初に、スマートフォンやパソコンなどのデジタル機器のパスワードを入力してロック解除することからスタートです。
生前に被相続人からパスワードを聞いていれば簡単に解除できますが、難しいケースもあります。この場合は、専門業者に依頼して、デジタル機器のパスワードを解除しなくてはなりません。かなり費用もかかることを覚悟しなければなりません。
(2)スマートフォンやタブレットのアプリを確認する
ネット銀行や仮想通貨などの金融取引は、アプリを介して手続きします。スマートフォンやタブレットのアプリを確認することで、デジタル遺産の有無を確認できます。
(3)ブックマークされているサイトやメールを確認する
ブックマークサイトやメールの受信ボックスから、デジタル遺産の有無を確認します。
取引状況を受信するメールは、利用しているデジタル遺産を発見する大きなヒントです。関連するサイトがブックマークされていることも多いでしょう。取引していた形跡のあるサイトに問合せしてデジタル遺産を発見するケースもあります。
(4)クレジットカードや銀行の口座明細の取引内容を確認する
クレジットカードの利用明細や銀行預金の口座明細から、デジタル遺産の有無を確認できます。取引していた形跡のある会社に連絡して、デジタル遺産の存在を問い合わせます。
(5)デジタル機器のデータを取り出す専門業者に依頼する
スマートフォンやパソコン内部のデータを抜き出す専門業者に依頼して、デジタル遺産の取引があったかを確認する方法もありますが、依頼するかどうかは慎重な判断が必要です。
依頼費用が高額になることが多く、解読にたどり着けない場合もあり得ます。調査し尽くしても見つからない場合の最後の手段として、覚えておきましょう。
デジタル遺産のトラブルを防ぐために
相続人である残された家族がデジタル遺産を発見できるかどうかについては、かなりハードルの高い作業になることが想像できます。
相続発生時のトラブルを回避するためには、契約者本人がデジタル遺産を生前に整理し、引き継ぎ方や処分方法を明記しておくことがもっとも重要なポイントです。
遺言書の作成や死後事務委任契約の締結は、家族の負担を減らせる有効な方法になりますので、一度相続のプロである士業に相談してみてください。





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