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【家族信託】家族信託の注意点を解説

  • 執筆者の写真: 行政書士 服部祥明
    行政書士 服部祥明
  • 10月14日
  • 読了時間: 5分

更新日:11月21日

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親の認知症対策として「家族信託」という選択肢に注目が集まっています。

家族信託は非常に柔軟性が高く、利用するメリットも多いです。しかし、家族信託で全てが解決するというわけではなく、利用を検討する上で、事前に知っておくべき注意点がいくつかあるのも事実です。

そこで本記事では、家族信託の注意点について解説します。

 

  共有不動産がある場合にとくに有効な家族信託

共有不動産がある場合は家族信託の利用がおすすめです。

共有不動産の共有者の1人が認知症になってしまうと、全員の合意が取れなくなり、意思決定が不可能になります。

たとえば、父親と子どもが不動産を共有している場合、父親が委託者になり、子どもを受託者に指定します。そうすることで、父親が認知症になっても、受託者である子どもが単独で意思決定できます。

 

  家族信託の盲点

(1)委託者に必要な意思能力

家族信託の利用を検討する上で、最も重要な条件は、委託者に「意思能力」があることです。具体的には、委託者が「自分がどのような財産を持っていて、誰に託したいか」「どのように管理して欲しいか」といった意思表示ができるということです。

したがって、委託者が意思能力を喪失した後では、家族信託を結ぶことはできません。

(2)信託できない財産がある

家族信託では信託できない財産もあります。主に挙げられるのは農地と年金受給権です。

農地は農地法による制限を受け、家族信託によって信託できません。また、年金受給権も信託することができません。

(3)「1年ルール」で強制終了してしまう

家族信託の盲点の1つが「1年ルール」です。

1年ルールは、家族信託の継承に関する決まりで、「受託者=受益者」の状態が1年間継続すると信託契約が終了してしまうという仕組みです。す。たとえば、財産権を親から子、子から孫に順番に承継させる家族信託を契約したとします。親が死亡し、子が受託者と受益者とを兼ねた場合、この状態が1年続くと家族信託は終了となります。

対策としては、家族信託を開始するときにあらかじめ第二受託者を決めておくなど、「受託者=受益者」の形を回避する工夫が必要です。

(4)家族信託の「30年ルール」とは?

家族信託では、契約した時の受益者(委託者である親と同一であることが多い)が亡くなっても、その後、子どもや孫などが受益者となり、財産を引き継ぐことができます。ただし信託契約を開始後、30年経てば、その時点の受益者が亡くなっても承継できるのは次の受益者までとなり、さらに次の受益者に引き継ぐことができません。これが「30年ルール」です。

たとえば、委託者であり受益者であった親が80歳、次の受益者となる子どもが50歳の時に家族信託契約を結びます。その後、親が亡くなり、子どもが受益者となりました。契約から30年経って子どもが80歳で存命であれば、子どもの次の受益者は受益権を承継することができますが、その次の受益者を定めていたとしても受益権は承継されません。

 

  そのほかの家族信託の注意点

さらに実際の運用に関する経済面での注意点を紹介します。

(1)家族信託は税金対策にはならない

家族信託を利用しても、直接的な節税効果は期待できません。家族信託を利用しても、本来払うべき税金が減るわけではありません。

(2)受託者に確定申告義務がある

家族信託を利用し信託財産から年間3万円以上の収入がある場合、受託者は翌年の1月31日までに、税務署に信託計算書、信託計算書合計表を提出する必要があります。

また、毎年の確定申告において不動産所得用の明細書のほか、信託財産に関する明細書を別途作成して添付しなければなりません。

(3)損益通算ができなくなる

信託不動産に不動産収入がある場合、損益通算が適用されないという問題があります。損益通算とは、所有する赤字経営の不動産の最終的な損失を、黒字経営の不動産の最終的な利益と足し合わせて利益を圧縮できる仕組みのことです。

たとえば、親が複数の収益アパートを所有していた場合、信託したアパートに損失があっても、信託していない黒字のアパートの利益と差引をして、損益通算することができません。

たとえば、収益不動産に大規模修繕など大きな支出を予定している場合などには注意が必要です。

 

  家族信託契約は専門家に相談してください

(1)親が元気なうちに契約を結びましょう

親に意思能力がなければ、家族信託は契約できません。親が元気なうちに、なるべく早めに行動しましょう。

なお、軽度な認知症であっても、判断能力が充分であると認定されれば、家族信託を契約できる可能性はあります。とはいえ、後にその家族信託の有効性を巡ってトラブルになる恐れがありますので、事前に専門家と相談して下さい。

(2)家族信託以外の相続対策も検討を

家族信託は万能の解決策になるとは限りません。当然、家族信託では対応できないケースもあります。そのような場合に備えて、公正証書遺言や任意後見契約、生命保険など他の方法を組み合わせるのも有効です。

そのほか、金銭について子供に管理を任せたい場合には、家族信託ではなく、生前贈与を活用する選択肢もあります。

(3)家族信託は専門家にお任せください

家族信託契約は、施行されてから判例もそれほど多くなく、弁護士や行政書士、司法書士といった士業でも専門にしている方はまだまだ少ないです。依頼する際には家族信託に詳しく経験豊かな専門家であるかどうかを見極める必要があります。

 
 
 

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