【相続問題】広域交付制度で便利になった戸籍収集と注意点について紹介
- 行政書士 服部祥明

- 11月18日
- 読了時間: 4分
更新日:11月21日

相続手続きが発生した場合は、原則として、亡くなった人(被相続人)の出生時から死亡時までの戸籍をすべて集めなければなりません。過去の婚姻歴などから、前妻との間の子や養子の有無を確認し、相続人を確定させる必要があるのです。
そのために、これまでは、被相続人の結婚、離婚、転籍などで戸籍が移動するごとに、それぞれの市区町村役場に個別に戸籍謄本を請求しなければなりませんでした。
日常業務としてこのような作業を行っている法律専門家は別として、一般の人にとってこの手続きは非常に負担のかかるものでした。
この負担を軽減するために、他管轄の戸籍謄本についても、最寄りの市区町村役場でまとめて請求できるようにした制度が「広域交付制度」です。
今回は、広域交付制度の仕組みの説明と、その注意点(限界)について解説します。
広域交付制度
令和6年3月1日から、本籍地が遠くにある場合でも、最寄りの市区町村の窓口で、親族の戸籍証明書(戸籍謄本・改製原戸籍謄本・除籍謄本など)を一か所でまとめて請求できる制度がスタートしました。
最寄りの市町村役場に請求すると、申請日の当日中に戸籍謄本が交付されます。
戸籍広域交付の注意点(限界)
戸籍の広域交付制度は非常に便利ですが、すべての戸籍が請求対象になっているわけではありません。以下の点には注意が必要です。
(1)請求できるのは直系親族だけ
戸籍の広域交付制度を利用して請求できるのは、本人、配偶者、父母や祖父母などの直系尊属と、子や孫などの直系卑属に限られています。
兄弟姉妹、叔父や叔母などの戸籍謄本を請求することはできません。
(2)郵送や第三者による請求はできない
この制度を利用する場合には、必ず請求者本人が、市区町村役場に直接出向く必要があります。
行政書士や司法書士、弁護士などの法律の専門家には、依頼者の戸籍謄本を、職務上請求により取得することが許されていますが、戸籍の広域交付制度では、職務上請求は認められていません。
(3)対象外の戸籍もある
そのほか、以下で説明する戸籍関連書類については広域交付制度を利用して請求することはできません。
●戸籍抄本や除籍抄本
「抄本」とは、一部の人だけの記載事項を証明するものです。戸籍抄本や除籍抄本とは、戸籍謄本や除籍謄本に記載されているなかの一人の記載事項だけを抽出した証明書のことです。
これらは、戸籍の広域交付制度を利用して取得することができません。
●戸籍の附票
住民票除票には、被相続人の最後の住所が記載されており、戸籍の附票には、その本籍地に本籍を置いている間に登録していた住所地の変遷が記載されています。
登記簿上の住所から亡くなるまでの間に複数回、住所を移転している場合は、住民票除票ではつながりが証明できないので、戸籍の附票を取得する必要があります。
しかし、広域交付制度では、戸籍の附票は取得できないので、必要な場合は、従来どおり本籍地を管轄する市区町村役場に郵送または出向いて請求する流れとなります。
●コンピューター化されていない戸籍
現存する戸籍謄本の多くはコンピューター化により、手書きで作成されていた時代のものを含めて順次、データ化されて管理されています。
現時点でまだ、データ化がされていない戸籍謄本については、この制度を利用できません。データ化がすすんで、該当するケースはほとんどなくなったといわれていますが、注意が必要です。
相続手続きは専門家に相談するのが得策
戸籍の広域交付制度を利用することによって、相続に関する手続きの書類収集にかかる手間や時間は、かなり軽減されることになりました。
しかし、親や祖父母の戸籍は収集できたとしても、兄弟姉妹、叔父叔母や従妹などに相続人が拡大した場合は、かれらの戸籍謄本の収集に際しては、広域交付は使えず、これまで通り、それぞれの市町村役場に戸籍謄本の発行を請求することになります。
なお、相続手続きにおいて、戸籍謄本の収集は入り口にすぎません。相続関係が複雑な場合や複数の相続財産がある場合などは、その後の手続きの難易度が上がります。
行政書士などの専門家であれば、戸籍謄本の収集はもちろん、その先の遺産分割協議書の作成、銀行口座解約などの遺産承継業務をまとめて依頼することができます。
また、広域交付制度を実際に自分で利用して戸籍を集めたとしても、相続関係の手続きに関しては、専門家に相談しながらスムーズにすすめることをお勧めします。





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