【相続問題】遺族年金の基礎についてわかりやく解説
- 行政書士 服部祥明

- 10月30日
- 読了時間: 4分
更新日:11月21日

一家の大黒柱として働いていた人が亡くなってしまったら、残された家族は、どのように生計を立てていけばいいのか、心配になります。わたしの周囲でも、現役世代のお父さんが亡くなる事例をいくつも耳にします。
そんなときに遺族の力になってくれるのが、遺族年金という仕組みです。今回はその仕組みについて解説します。
「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」
遺族年金は、国民年金または厚生年金保険に加入していた人が亡くなった際に、生計を支えられていた遺族が受け取ることができる年金です。
遺族年金には、国民年金に加入していた方が亡くなった際に支給される「遺族基礎年金」と、厚生年金に加入していた方が亡くなった際に支給される「遺族厚生年金」の2種類があります。
遺族基礎年金
遺族基礎年金は、国民年金に加入しているすべての人が対象で、「子のある配偶者」または「子」が受給対象です。
(1)遺族基礎年金の要件
おもに以下の条件を満たした場合に、支給が開始します。
・国民年金の被保険者である間に死亡した場合
・国民年金の被保険者で、60歳以上65歳未満の方が死亡した場合
・保険料納付済期間と対象期間等を合算した期間が25年以上ある方が死亡した場合
(老齢基礎年金の受給権者を含む)
(2)遺族基礎年金の受給対象
受給対象は、亡くなった方によって生計を維持されていた子どもがいる配偶者、または18歳未満(もしくは20歳未満の障害者)の子どもで、受給者は配偶者または子どものいずれかです。また、受給するためには、亡くなった方と生計を同じくし、年収が850万円未満であるという条件を満たす必要があります。
(3)遺族基礎年金の支給額
81.6万円 +子の加算額(年額)
(子の加算額:2人まで⇒各23.48万円。3人以降⇒各7.83万円)
④遺族基礎年金の受給期間
配偶者が受給する場合は、受給期間はすべての子どもが18歳になる年度の3月31日までです。子どもが受給する場合は、本人が18歳になる年度の3月31日で終了します。
遺族厚生年金
遺族厚生年金は、厚生年金に加入していた方(会社員や公務員)が対象で、金額は亡くなった方の報酬や加入期間に基づいて計算されます。通常の年金と同様、遺族厚生年金と遺族基礎年金をあわせて受け取ることができます。
遺族厚生年金を受け取ることができるのは、亡くなった方によって生計を支えられていた遺族の中で、以下に定められた優先順位の高い人が対象です。生計要件は遺族基礎年金と同様、年収850万円未満となっています。
(1)遺族厚生年金の要件
おもに以下の条件を満たした場合に、支給対象になります。
・厚生年金の被保険者である間に死亡したとき
・障害厚生(共済)年金を受け取っている方が死亡したとき
・保険料納付済期間と合算対象期間等を合算した期間が25年以上ある方が死亡した場合
(老齢厚生年金の受給権者を含む)
(2)遺族厚生年金の受給対象
遺族厚生年金の受給対象者は、亡くなった人によって生計を維持されていた遺族のうち、以下の順番で優先的に受給権が与えられます。
1.子のある配偶者
2.子(18歳未満、または20歳未満の障害者)
3.子のない配偶者
4.父母
5.孫
6.祖父母
なお、配偶者には、事実婚(内縁)のパートナーも含まれます。
(3)遺族厚生年金の支給額
遺族厚生年金額は、亡くなった方の平均標準報酬額や加入期間に基づいて計算されます。以下の基本的な計算式を参考にしてください。
①(平均標準報酬月額×7.125/1000×平成15年3月までの加入期間の月数)
②(平均標準報酬月額×5,481/1000×平成15年4月以降の加入期間の月数)×3/4
③年金支給額:①+②
(4)遺族厚生年金の受給期間
遺族厚生年金では、子どもが18歳になると支給が終了するのは遺族基礎年金と同じですが、妻や夫に関しては一生涯支給されます。
遺族年金の請求手続
遺族年金を受給するためには、所定の手続きを行う必要があります。自動的に需給が開始するわけではなく、請求せずにいると、時効により受給権は消滅します。
(1)必要書類
提出する書類には、年金請求書、年金手帳、戸籍謄本、住民票の写し、死亡診断書のコピー、収入証明書などが含まれます。
(2)請求窓口
遺族基礎年金は死亡した人の住所地の市区町村役場に請求します。
一方、遺族厚生年金の請求は年金事務所または年金相談センターにおこないます。受付窓口が異なるので注意が必要です。
詳しくは日本年金機構のホームページで確認してください。
遺族年金を受給する際の注意点
公的年金はひとり一年金が原則です。遺族、老齢、障害といった異なる年金を受け取る権利がある場合、その中からひとつを選択しなければなりません。
たとえば、遺族基礎年金と老齢年金(老齢基礎年金、老齢厚生年金)の両方を受給できる権利がある場合は、受給額や税金を考慮して、どちらの年金を受け取るかを選ぶことが重要です。
遺族年金についての相談窓口
年金事務所や年金相談センターでは、年金に関しての相談を受け付けています。そのほか、保険、年金の専門家である社会保険労務士に相談することも選択肢のひとつです。





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