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【離婚問題】離婚給付公正証書の強制執行認諾でできること、できないこと

  • 執筆者の写真: 行政書士 服部祥明
    行政書士 服部祥明
  • 11月18日
  • 読了時間: 5分

更新日:11月21日


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離婚給付公正証書のメインの目的は,養育費や婚姻費用の支払いがストップした場合に、相手方の財産を差押えし、強制執行をすることにあります。

公正証書によって強制執行をするにあたり、その項目に「金銭債務について履行を怠ったときは、強制執行に服する」旨の「強制執行認諾文言」が記載されている必要があります。

 

  離婚給付公正証書による強制執行

離婚時に、財産分与や慰謝料、養育費などの支払いについて合意していた場合でも、離婚後に実際の支払いが行われないというトラブルの声が多く寄せられています。

とくに、養育費のように長期間の支払いが予定されている場合には、当初は支払いが行われていても、途中で途絶えることは珍しくありません。

このような問題に対処するために、離婚給付公正証書という強力な契約を締結し、強制執行により、相手方に支払いを求める条項を入れるという選択があります。

公正証書によって、相手方の預貯金、不動産、保険契約の解約返戻金などを差し押さえることによって、滞っている金銭を回収することが可能です。

通常であれば、強制執行するためには裁判を経る必要があるところ、要件を満たした離婚公正証書があれば、裁判手続きを行わずに、申し立てをするだけで、債務の不履行に対して直ちに強制執行を行うことができます

 

  離婚給付公正証書の強制執行の条件

(1)債務の内容が金銭の支払いを内容とする

債権の内容が金銭の支払いを内容とするもの(金銭債務)でなければなりません。そのほか、「再婚を禁じる」といった内容も無効です。

(2)支払う金額と支払期日が確定している

金額の確定と,支払期日の確定がされているかどうかについて,十分に注意してください。

たとえば、養育費であれば,「子どもの18歳の誕生月まで、毎月5万円を毎月末日に支払う」というように、内容が確定していることが必要です。

「退職金の2分の1を支払う」という内容は、強制執行認諾に即しません。相手方がいつ会社を退職するのか未定であり、将来的に退職金の金額が変動する可能性があるからです。

(3)強制執行認諾文言が入っている

具体的な強制執行認諾は、このような文言になります。

・本公正証書の金銭債務を履行しないときは、直ちに強制執行に服する旨陳述した。

 

  離婚給付公正証書による強制執行の手続きと対象となる財産

離婚時に取り決めた金銭の支払いが行われない場合、請求側は、裁判所を通じて強制執行を申立て、相手の財産を差し押さえることができます。

(1)不動産執行(相手の不動産を競売にかける)

不動産執行とは、相手方の土地や建物を差し押さえ、強制的に換価して金銭を回収する手続きのことで、次の2つの方法があります。

●強制競売⇒不動産を競売にかけ、売却代金から債権を回収する
●強制管理⇒不動産の賃料から債権を回収する

実際には主に強制競売が利用されることが多いです。

不動産は財産隠しがされにくい点が大きな利点です。その一方で、手続きに長期間を要することや、不動産の処分費用がかかるのがデメリットです。

(2)債権執行(預貯金や給与を差し押さえる)

債権執行は、相手方の債権を差し押さえて、換金して回収する手続きです。

具体的には、以下のような債権が差押えの対象になります。

●勤務先に対する給与債権
●取引先に対する売掛債権
●銀行に対する預貯金債権
●貸金債権

債権を換価する手続きが不要で、比較的簡単かつ迅速に回収できるというメリットがありますが、相手方が、どこにどれぐらいの債権を持っているのか、正確に特定することが難しい場合があります。

(3)動産執行 (車や貴金属などを換金する)

動産執行は、現金や宝石、ブランド品などの動産を差し押さえて、換価して回収する手続きです。

ただし、中古品や価値の低い動産は十分な債権回収に繋がらない可能性が高いので、注意が必要です。

(4)間接強制(裁判による子どもの引渡しや面会交流の請求)

間接強制は、公正証書の強制執行認諾ではなく、裁判所による調停や審判による手続きです。

面会交流の実現や子どもの引渡しを求めるケースでは、裁判所の執行官が無理やり子どもを連れてきて面会を実現するような強制方法(直接強制)は適さないので、間接的に相手に履行を促す方法がとられます。たとえば、面会交流であれば、相手が決められた期間内に面会を実施しないときには一定額の金銭を支払わせることを命じて、義務の履行を促します。

 

  離婚給付公正証書によって強制執行できない財産

法律上強制執行の対象にできない財産もあり、たとえば以下のものが挙げられます。

●生活に欠くことができない衣服、寝具、家具等
●一か月の生活に必要な食料及び燃料
●66万円以下の現金
●年金や生活保護費
●学校や教育施設における学習に必要な書類及び器具
●職業や宗教のために欠くことができないもの

給料や退職金については、原則として4分の1までしか差し押さえることができませんが、養育費や婚姻費用の請求であれば、例外的に2分の1まで差し押さえることが可能です。

また、給与が手取りで33万円を超える場合には、超えた額については全て差し押さえを行うことが可能です。

 

  離婚給付公正証書によって強制執行する際の手続き

(1)手続きの流れ

必要書類を用意して裁判所に強制執行の申立てを行います。申立先は、相手方(債務者)の住所地を管轄する地方裁判所です。

申立書が裁判所に受理されると、裁判所は相手方に対して差押命令を発令します。相手方が差押命令を受け取った後、一定の期間が経過すると、債権者は第三債務者(相手方の勤務先や金融機関など)に対する取立権を取得します。

取立権を取得した後は、第三債務者に直接連絡して債権を取り立てることが可能です。

たとえば、給与債権の場合は、勤務先に連絡して給与の振り込みなどの対応を依頼する形になります。

(2)強制執行の費用

裁判所に納める費用として、収入印紙代に4,000円、郵券切手代として3,000円〜5,000円程度かかります。

手続きについても、それほど複雑ではありません。公正証書を作成した公証役場に手続きの流れを尋ねられてもいいでしょう。

 
 
 

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